森本 優さん
インタビュー公開日:2024.07.12

常にラジオが身近だった生活。
14歳の時に聴いた番組が転機に。
毎週金曜日に放送されている、学生を応援するAIR-G’(エフエム北海道)の人気番組「IMAREAL(イマリアル)」。メインパーソナリティの森本優さんは、時に熱く、時に優しく語り、さまざまな企画で4時間の生放送でリスナーを楽しませています。
高知県出身の森本さんは子どものころから、生活のあらゆるシーンでラジオが流れる環境で育ったといいます。そして、14歳の秋に放送が開始された「SCHOOL OF LOCK!」が転機になりました。
「自分に向けて語ってくれている感じが心地よく、テスト勉強の時などにいつも聴いていました。ある日、電話で悩みを相談するコーナーに同じ年の女の子が出ていて。その子は学校ではいじめ、家では家庭内暴力を受けており、出演者も戸惑うほどの壮絶な相談内容でした。でも、最後にはその女の子から『学校にも、家にも居場所がない。だけど、ラジオだけは私の居場所なんです』という言葉を聴き、『ラジオって人を救えるんだ!すごい』と感じたんです。それが、私がラジオの仕事をしたいと思ったきっかけです」
IMAREALはこちらから

ラジオの街・東京の大学へ。
新卒採用でチャンスをつかむ。
夢に向けて動き始めたのは、大学進学の時。「ラジオがつくられている街、東京に行きたい」と思い、メディア社会学科がある法政大学に入学。学生生活の傍ら、アナウンススクールに通い、番組のレポーターとして出演し、ラジオの世界に着々と近づいていきます。
就職活動の時は「五大都市」のラジオ局に絞ってエントリーし、たまたま募集があったAIR-G’に応募しました。「音楽を大切にする局なので、音楽が好きで大学時代に200回ライブに行った経験と、ラジオに対する想いを熱く語りました」
その結果、狭き門を突破して採用に。入局当初はニュースや天気予報などの短い原稿読みから始まり、徐々に担当番組を持つように。そして3年目ころからは、録音した音源を編集する「制作」やどの時間帯にどのような番組を誰が担当するかなどを決める「プロデュース」の業務にも携わるようになりました。現在は、自身が出演している番組以外も、プロデューサーとしても多忙な毎日を送っています。
温めてきた学生向け企画を実現。
経験と想いを乗せることを大切に。
着々と経験を積む中、2017年4月から始まったのが、「学生のイマをリアルに伝える『IMAREAL』」です。森本さんが新人研修の一環として書いた企画書が基になり、放送が実現。プロデューサーとメインパーソナリティの両方を務めています。
森本さんが大切にしているのは、「経験と想いを乗せて伝える」こと。「例えばお店のオープンの紹介なら、ただ事実を伝えるだけでなく『100人以上が行列を作っていました。ショーウインドウはこんな形で…』など情景を話すとよりリアルに伝わります。これは自分が実際にその場で見ないとわからないこと。だから説得力が出るんです」
それを常に実践するため、「IMAREAL」では毎週中学校や高校に出向いて収録をし、さらには音楽の情報をリアルに伝えるため、毎週ライブに参加しています。ファンと同じようにライブを体験し、より深く知ろうとする姿勢にアーティストからの信頼も厚く、「森本さんの番組だけは必ず出る」というアーティストも何人もいるそう。
「あなたをひとりにしない」
現状とエールを伝え続ける。
「IMAREAL」の中に、未成年にも関わらず家事や家族のケアに時間を費やす「ヤングケアラー」のことを伝える時間があります。「『ひとりじゃない』プロジェクト」のコーナーです。
「私自身、9歳下の双子の弟たちがいて、手のかかる時期に父が単身赴任だったので、母が大変な時は弟の面倒を見ていました。そのように家族に自分の時間を使っている子は実はたくさんいるのではないかと感じています。聞いている『あなた』に向け、『ひとりにしない』という想いを届けるのは『IMAREAL』で大切にしていることの延長線上です」
ヤングケアラーのことをリアルに伝えるため、日ごろから支援している北海道ヤングケアラー相談サポートセンター長の加藤高一郎さんが毎週ゲスト出演。当事者から相談を受けている状況や、支援の取り組み、相談のための連絡方法などを伝えています。「当事者からはもちろん、自分がヤングケアラーだったという大人の方からの反響も大きいです。ラジオを聴いて相談に来た方もいると聞いており、少しずつ手応えを感じています」
ずっとラジオに関わっていたい。
北海道の人たちに届け!!
「IMAREAL」は放送開始から8年。インターネットラジオが普及する現在、メールを送ってくれるリスナーの8割が道外の人だとか。SNSなどで評判を知って聴いてくれる人が多いのを喜ぶ一方、地元北海道のリスナーをもっと増やしたいといいます。
「就職で北海道に来て、最初は読めない地名がたくさんありました。そして各地に行き北海道の広さを知りました。番組にメールをいただき、住所を見るたびに『遠くから聴いてくれているんだな』と感じます。北海道は食べ物がおいしいし、四季を肌で感じられ、生きている実感がわきます。ずっと住みたいと思う場所ですね」
北海道を体感しながら全国、世界に発信する森本さんの活躍に、今後も“耳”が離せません。
シゴトのフカボリ
ラジオパーソナリティの一日
14:00
出勤、放送の準備
16:00
番組ディレクター、アシスタントディレクターとの打ち合わせ
当日の放送について確認、次週の内容について討議
18:00
「IMAREAL」放送開始
22:00
放送終了、片付けなど
22:30
退勤
(「IMAREAL」の生放送がある金曜日の一例)
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
番組グッズ
番組からのメッセージ入りオレンジペンは、制服の胸に差して「IMAREAL」リスナーをアピールする作戦を進行中。番組名のカードは、メッセージを書いて手渡しています。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

家族や友人が簡単に「大丈夫だよ」と言えない状況でも、ラジオパーソナリティという距離感だからこそ言える「大丈夫」をあえて発信しています。その一言が必要な時に、頼れる存在でありたいです。

AIR-G’ エフエム北海道

北海道初の民放FMラジオ局。愛称「AIR-G'」には「Gee Great(なんて素晴らしいんだろう)」と歓んでもらいたいという意味が込められています。

住所
北海道札幌市中央区北1条西2丁目 札幌時計台ビル14F 
TEL
011-241-0804
URL
https://www.air-g.co.jp/

お仕事データ

軽快なトークで番組を進行
ラジオパーソナリティ
ラジオパーソナリティとは
軽快なトークを届けながら、
ラジオ番組を進める進行役。

プロデューサーやディレクター、構成作家などのスタッフとともに企画を考え、ラジオ番組を進める仕事。音楽をより魅力的に聞いてもらうための「しゃべり」を展開するほか、リスナーからのハガキやメールを紹介したり、ゲストが登場する場合は掛け合いをしたり、軽快にトークしながら番組を進行させていきます。華やかな職業の一方、音楽やエンターテインメント、政治経済など話題を集める下準備も欠かせません。

ラジオパーソナリティに向いてる人って?
自ら発信したいという思いがあり、
「個性」という武器を持っている!

聞き取りやすい声の出し方や正しい日本語を覚えるのはマスト。さらに、番組の舵取り役でもあることから、自ら発信したいという強い思いのある人が向いています。社会常識や文化、歴史、政治経済、科学技術など広い範囲の知識を吸収するとともに、自分の専門分野を個性として生かすのも武器になるはず。また、ラジオは生放送が多いため、緊急時でも柔軟に対応できる力が必要です。

ラジオパーソナリティになるためには

ラジオパーソナリティには特別な資格や学歴は求められません。大学・短大の音楽系や放送系学科、専門学校のアナウンサーコースなどで学び、ラジオ局に就職する方法が一般的です。ほかにも、タレント事務所に所属して仕事を紹介してもらったり、ラジオ局主催のオーディションを受けて道が開ける場合もあります。

ワンポイントアドバイス
テレビと比べてファンとの距離が近く、
リアクションがすぐに受け取れる!

若者のラジオ離れが進んでいるといわれていましたが、東日本大震災以降は災害時の大切なツールとしてその良さが再確認されています。ラジオは今そこで何が起こっているのかをリアルタイムで伝えられるメディア。テレビと比べるとファンとの距離感が近く、番組へのリアクションをすぐに受け取れるのもメリットです。このような魅力を感じられるところもラジオパーソナリティのやりがいにつながっています。