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藤岡 一樹さん
インタビュー公開日:2024.08.23

子どもの寝顔しか見られない毎日を
変えなければ…と転職を決意。
広大な敷地には、寸分たがわずカットされた木材がズラリ。工場の中に入っていくと、原木の皮を機械でむく人がいたり、次の工程では丸太の両端をのこぎりで割ってタイコ状にする人がいたり、見事な連携プレーで次々と製品が生まれていきます。
「ウチの工場では建築資材やパレット用の木材、製品にならない部分からは製紙用のチップを作るなど、木をあますことなく活用しているんですよ」
こう声をかけてくれたのは、木材加工スタッフの藤岡一樹さん。お父さんと一緒に実家の屋根を塗った経験があることから、高校卒業後は塗装工として就職したと振り返ります。
「ただ、まだ若かったこともあり、『思っていた仕事と違う』とすぐに辞めてしまったんです。以来、派遣で工場を転々としたり、鶏処理の仕事に就いてみたり、直近では牧場スタッフとして働きました」
ところが、牧場では朝の3時に出勤し、帰ってくるのは深夜に近いハードな環境だったとか。子どもの寝顔しか見られないことに、次第に胸の内が悶々とするようになったと苦笑します。
木材を手でさわっただけで、
厚さが分かるようになりました。
藤岡さんの転機となったのは、関木材工業に勤める幼馴染の一言。「人手が足りないから、何かあったら社長を紹介する」と声をかけてくれたことから、早々に職場見学に出かけることにしました。
「工場系の仕事は黙々と作業するイメージでしたが、関木材工業は皆で声をかけ合って和気あいあいとしている印象を受けました。楽しそうに働く姿に心が惹かれたのはもちろん、働く環境もしっかりとしていると聞いて転職を決めたんです」
入社後、藤岡さんはカットされた木材を指定の場所に積み上げたり、同じサイズのものを梱包したりする持ち場からスタート。指示通りに作業を進めれば良いため難しくはありませんが、ホームセンターで見かけるような木材をいくつも重ねて持つのが当初は厳しかったと振り返ります。
「幼馴染からは手の感覚だけで厚さがどれくらいの製品か、パッと見でサイズはどれくらいか分かるようにならなければいけないと教わりました。ムリだって思いますよね(笑)。でも、じっくりと木材を観察しながら作業を繰り返すと、段々と感触がつかめてくるものなんです」
上司から教わった細かなコツを
後輩のためにもマニュアル化!
関木材工業では、北海道産のカラマツやトドマツの皮をむくところが工程のスタートライン。その原木からどれくらいの角材や製品に加工できるかをセンサーやPCなどで計算し、丸太の両端にのこぎりを入れ、タイコ状に大割するのが「本機」と呼ばれる工場の司令塔です。
「タイコ状になった木を1号と呼ばれる機械で大きめの製材にカットし、さらにそこから小さな製品に加工するのが2号という機械。1号と2号で余った部分が製紙用のチップとして使われます。つまり、1本の丸太から多く製品にすればするほど会社の利益につながるんです」
藤岡さんは木材の積み上げや梱包を経た後、2号の機械でカットに携わりました。とはいえ、最初は右も左も分からず、単にノコを引けば良いと考えていたそうです。
「でも、上司は僕の後ろにビッチリついてくれて、『こういう音がしたらノコが欠けているから気をつけて』『こういう年輪がある場合はまっすぐに切れないから少し角度を変えて』と、ことあるごとにアドバイスを送ってくれました。僕はそれをメモにして、後輩のためにも簡単なマニュアルのように機械に貼り付けました」
どう作業してどう切ると
ムダがないか考えるのも面白い!
現在、藤岡さんは大きな木材を加工する1号の機械を任されています。この持ち場は「本機」が次々と送ってくるタイコ状の丸太を指示書通りのサイズにカットしながら、2号の機械で作業しやすいようにリズムを作るイメージなのだそうです。
「最初は丸太がどんどん流れてくると、焦ってしまって基礎をないがしろにしてしまったことも。けれど、『本機』の先輩は失敗を叱るよりも、リカバリーを考えてくれる人柄。多少遅くなってでも決められた手順を守り、自分の中でルーティン化させることで次第にミスがなくなっていきました」
藤岡さんは出勤後にその日の作業指示書に目を通し、どのような流れでどれくらい製品をカットできるかシミュレーションするのが日課となりました。
「当然ながら木のサイズはバラバラで、一つひとつにクセもあります。それを見ながら、どう作業すると効率的になり、どうカットを工夫すればできるだけチップにならないように製品を切り出せるか考えるのも面白いんですよね」
残業がほぼなく、休みもしっかり。
家族と過ごす時間が増えました。
藤岡さんが入社前に聞いていた通り、関木材工業は残業がほとんどなく、お休みもしっかりと取ることができます。前職の牧場時代よりも子どもたちとふれ合える時間が格段に増えたと満面の笑み。
「ゴールデンウィークやお盆も連休なので、家族で動物園に出かけたり、水族館に遊びに行ったり、家族の時間が充実するようになりました。勤務年数や頑張りに応じて、キチンと収入もアップするので、安定した未来を描けるのも魅力です」
新得町は藤岡さんが生まれ育ったまち。大きなお祭りに顔を出せば知り合いと会うことも多く、会社の同僚たちとも楽しく過ごしているそうです。「自分のことを知っている人がいっぱいる…これも田舎の良いところかもしれません」と表情を緩めてこう言葉を継ぎます。
「今後は『本機』を目指したいところですが、1本の木からどれくらい製品を生み出せるのかを考えるには複雑な計算が必要と聞いています。ただ、この会社で長く働きたいと思っているからこそ、チャンスを与えてもらえるなら、全力で努力していきたいですね」
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
サイズを測るメジャー類
原木の長さを測ったり、切り出した木の厚みを確認するためにメジャー類は欠かせません。その下に置いてあるのが指示書。この指示にもとづいて製品をカットしたり、僕の場合は休憩中などに次の作業のシミュレーションを行っています。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

僕は、これまで多くの仕事を転々としてきて、やはり工場での作業が好きなことに気づきました。自分に合っている職場を見つけ、その中でやりがいを感じていくことができれば、自ずと長く働きたいと思えるはずです。

株式会社関木材工業

豊かな森林資源に恵まれた新得町で、主に北海道産のカラマツやトドマツを建築資材や木材パレット用製材、梱包用木材、チップなどに加工。1本のカラマツやトドマツからできる限り多くの製品を作り、副産物としてのチップも製造するなど、木をあますことなく活用。

住所
北海道上川郡新得町字新得基線67番地
TEL
0156-64-5653
URL
https://seki-moku.com/

お仕事データ

工場内で製品を生産。
製造工
製造工とは
製品の加工や組み立て、
メンテナンスなどものづくりに携わる仕事。

製造工は家電やパソコン、電子機器といった機械製品から、住宅用資材、紙、プラスチック用品、さらには施設の一部に使われる大型製品まで、多種多彩なものづくりに携わる仕事です。主に工場のライン作業によって各パーツを加工したり、部品を組み立てたり、さまざまな工程を経て一つの製品を完成させます。一方で、繊細な手作業によってものづくりを行う職場も少なくありません。「つくる」だけではなく、製品の最終検査や梱包・出荷、納品後のメンテナンスや修繕を担うこともあります。いずれの作業もものづくりの世界には欠かすことができませんが、未経験者にも門戸を開く企業が多いことからチャレンジしやすい仕事です。

製造工に向いてる人って?
「ものづくりが好き」で、
根気強さと注意深さを持っている人。

製造工には「ものづくりが好き」という気持ちが欠かせません。作業自体は決められたマニュアルやルールに沿うケースが多いことから、同じ作業をコツコツと続けられる根気強さも必要です。また、機械で加工した部品に不良がないかチェックしたり、製品の最終検査をしたりすることもあるため、注意深いタイプの人も向いているでしょう。

製造工なるためには

製造工になるために必要な資格はありません。多くの場合、工業系の高校や専門学校、短大・大学を卒業後、製造工場を持つ会社に就職するのが一般的です。知識やスキルは入社後の教育・研修によって身につけられるため、未経験からでも挑戦しやすい仕事といえるでしょう。職場や手がける製品によっては、後々「フォークリフト」や「玉掛け」などの資格取得をすすめられることがあります。

ワンポイントアドバイス
マルチスキルを持った製造工が
今後のカギを握る存在に!?

これまでの製造工は、一人が一つの持ち場だけを担当するケースが一般的でした。けれど、ここ最近は複数台の機械を操作できたり、多くの作業や工程を担える技術を身につけたり、マルチスキルを習得させる企業が増えているようです。そうすることで皆で仕事を分散して業務量を平準化できる他、チームワークや組織の柔軟性が高まるといわれています。今後はマルチスキルを持った製造工が会社のカギを握りそうです。