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豊巻 雄平さん
インタビュー公開日:2024.08.08

高校まで一貫して学べる環境づくり。
夕張高校魅力化プロジェクトを担当。
夕張メロンの産地として、黄色いハンカチが印象的なロードムービーのロケ地として知られ、かつては炭鉱のマチとして栄えた北海道夕張市。千歳空港から約1時間の山間にあるこのまちでは、8年ほど前に一つの事業がスタートしました。「夕張高校魅力化プロジェクト」というのがその名称。
「南北35キロ、東西25キロほどの面積を持つ夕張市。そこに1校だけある高校が、入学者数の減少から各学年とも1クラスとなり、このままでは働き世代の人材も減少し、まちからどんどん活気が失われる。そんな危機感から始まった取り組みがこのプロジェクトです」
そう教えてくれたのは、夕張市役所に入庁して10年目の豊巻雄平さん。地域振興課で、”高校魅力化事業”という仕事を担当しています。炭鉱の閉山をきっかけとして産業が衰退し、2007年には財政再建団体となった夕張市(2026年度末には実質的な財政再建が完了)。人口は最盛期の60年前と比べて18分の1まで減少しています(2024年6月現在)。
「高校まで一貫して学べる環境がなければ、子育て世代がさらにまちから出ていってしまう。そう考えた庁内の有志が、ワーキングチームをつくって動き出したのが最初と聞いています」
生徒・保護者、学校への多様な支援。
居場所づくりも見据えた公設塾も設置。
夕張高校魅力化プロジェクトは、夕張市として、道立の夕張高校と連携しながら魅力ある学校づくりをしていこうという取り組みで、さまざまな支援を生徒、保護者、高校全体の活動に対して行っています。
「都市部の学校と遜色なく、挑戦したい気持ちを叶えられるよう、たとえば資格・検定試験、模擬試験などの受験料半額補助、部活動の遠征費の補助、教材費の補助、入学支援金の支給など経済的な支援のほか、海外短期留学研修派遣、マンツーマンオンライン英会話の実施など、学びを支えるサポートも行っています」
さらに、夕張市内には民間の学習塾がないことから、大学受験などを目指す生徒のために、「夕張学舎キセキノ」という公設の塾も開設しているというから驚きです。プロの塾講師が学習指導を行いますが、塾主導のカリキュラムではなく、自主学習の支援が中心。およそ4割の生徒が通っているそうです。
「この塾は、生徒たちの交流の場という意味合いも持っています。遊ぶところも少ないなか、家庭でも学校でもないもう一つの居場所として過ごして欲しいんです」
そう話しながら、母校でもある高校のサポートに意欲を燃やす豊巻さんです。
まちの振興にも力を発揮したい。
地元の市役所に入庁した時の思い。
生まれも育ちも夕張という豊巻さん。「私が高校生の頃は、30人・2クラスでした」と懐かしそうに話します。公務員を目指して専門学校で学び、夕張市役所に入庁しました。
「正直にいうと、その時はどうしても夕張市役所に入りたいと考えたわけではありませんでしたが、入庁にあたっては、まちの振興にも力を発揮したいという気持ちが湧いてきました。熱い思い、というほどではないにせよ、何か役に立てることがあればと」
そんな豊巻さん、入庁後に配属になったのは市民課生活環境係という部署。生活ゴミ、浴場、火葬場など、主にまちの公衆衛生関連の仕事や、市民の窓口業務を経験しました。その後、今と同じ地域振興課に移ります。
「地域振興課では、ふるさと納税や、現在携わっている高校魅力化業務にも関わりました。その後、教育委員会へ移動し、再び同じ部署に戻ってきた、というのが私の足跡です(笑)」
教育委員会では学校教育を担当し、教育に対する考え方、生徒や保護者との関わり方など、自分が知らなかったことを学べたと話す豊巻さん。その経験が、今に生きているそうです。数年で部署を異動するのは公務員ならではといえますが、だからこそ、さまざまな経験ができ、それが次に役立つことも実感しているそうです。
「総合的な探究の時間」の授業では、
2学年の生徒たちへアドバイスも。
高校に対して、また、生徒や保護者に向けて夕張市が行う支援の手続きや関連する書類の作成などに加え、現状の事業内容を常に見直し、ブラッシュアップしていくことも豊巻さんの大切な仕事なのだそうです。
「毎年、行っている事業でも、前年度の反省を踏まえてより良いものにしていくため、見直すことが必要です。高校の先生方とコミュニケーションをとり、綿密に打ち合わせを行います。市役所の担当が変わり、高校の先生が変わっても、事業が的確に行われていくよう意思疎通を図っておかなければなりませんから」
高校魅力化事業を通した支援と同時に、学校のカリキュラムにも豊巻さんは関わっています。夕張高校の総合的な探究の時間では、「夕張を知る」(1年生)、「夕張の未来を考える」(2年生)、「理想の夕張をつくる」(3年生)をテーマに探究活動が行われています。
「私は2年生の授業に入り、生徒たちがやりたいことに対して、具体的に考えるためのアドバイスなどを行っています」
学校に豊巻さんの姿を見つけると、生徒たちが駆け寄ってきます。先生のようでもあり、“地元のよきお兄ちゃん”といった雰囲気。市の職員が、こうして生徒と触れ合う機会があるのは夕張市ならではかもしれません。
道外へ夕張高校の魅力をアピール。
埼玉県から初の入学生がやってきた!
夕張市では、2023年から広く市外、道外に向けてまちと夕張高校の魅力を発信し、入学志望者を呼び込む活動もスタートさせています。
「主に若い職員が中心となり、どんな寮があれば魅力的かといった議論を行ったり、オンラインで中学生・保護者に向けた学校説明会を行っているほか、道外での説明会にも参加しています。新たな取り組みということで、ワクワクしていますし、裁量を持って一から関われたこともいい経験になりましたね」
夕張高校は、先生も生徒もタブレットを使って授業を行うなど、「ICT教育」の取り組みについては先端をいっており、そうした点等もアピールした結果、2024年には、埼玉県から入学者を迎え入れることができました。
「この経験を踏まえて今後、より効果的なPR活動について検討を行っていく予定です。高校は普通科で、その点では特色が薄いのですが、チャレンジしたい生徒を、いろいろな制度でしっかりバックアップしていることを打ち出していきたいですね」
かつて、炭鉱には全国から人が集まってきていました。そうした風土もあり、よそから来た人も受け入れる温かな風土が夕張にはあるのだとか。地元の市役所で働き、地元の魅力に改めて気づいたと、目を輝かせる豊巻さんです。
シゴトのフカボリ
夕張市職員の一日
8:45
出勤、メールチェックなど
9:00
書類作成など事務作業、Web会議で外部との打ち合わせ
12:00
昼食・休憩
13:00
高校へと出かけ、総合的な探究の時間の授業に入る
14:30
高校で先生と打ち合わせ
16:00
庁舎に戻り、事務作業
17:30
帰宅
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

高校魅力化業務は、生徒たちのチャレンジする気持ちに応えていくことが大きな目的ですが、私自身も同じ思いを忘れずに、よりよいサポートができるよう、日々、新たな気持ちでお取り組んでいきたいと思っています!

夕張市役所

1888年に石炭が発見され、1960年代に炭鉱の街として賑わった夕張市。厳しい財政状況のなか、まちの魅力を高める取り組みを積極的に行っています。

住所
北海道夕張市本町4丁目2番地
TEL
0123-52-3131
URL
https://www.city.yubari.lg.jp

お仕事データ

より良い暮らしのために
市町村役場職員
市町村役場職員とは
地域住民の暮らしに密着し、
行政サービスを提供。

市町村役場の職員は、警察官や消防士、教員と同じいわゆる地方公務員。地域住民の生活に密着した基礎的な行政サービスを担います。例えば、戸籍住民登録や各種諸証明の発行などの手続き、上下水道の整備、公園や緑地の整備、各種施設の運営管理など業務の幅は多彩です。一般的に「事務職」と「技術職」に分かれています。

市町村役場職員に向いてる人って?
「そのマチが好き」という気持ちがある。

丁寧で親しみやすい態度が好感を得るためのポイント。多くの自治体が厳しい財政状況にある今、市町村役場の職員はコストをかけることに対して地域住民にどんなメリットをもたらすのかを考え、住民サービスや施策を検討する必要があります。もちろん、「そのマチが好き」という気持ちは大前提です。

市町村役場職員になるためには

各自治体の採用試験を受験します。内容は市町村や受験職種によって異なりますが、事務職の場合、特に資格は必要なく、法律や一般常識などの筆記試験と、作文や面接などが行われるのが一般的。技術職は保健師や土木分野など、該当する資格や技能、専門的知識を問われることもあります。

※受験資格も各自治体で異なるため、詳しくは市町村のホームページをご確認ください。

ワンポイントアドバイス
幅広い仕事を経験。

市町村役場の事務職は、3~4年ほどのスパンで異動するケースがほとんど。それまでと全く畑違いの課で働くことは苦労も多い分、幅広い知識と経験が身につくこともメリットです。市町村役場の中の仕事を一通り覚えて、行政全体の流れを把握できて一人前と言われています。