• ホーム
  • 大下 実歩さん

札幌市職員(建築職)_大下 実歩さん
インタビュー公開日:2025.03.21

交通局が所管する建物の修繕工事や
地下鉄施設の更新を担当。
地下を走るから地下鉄。当たり前ですが、札幌市営地下鉄は少し違います。南北線で真駒内駅へ向かうと、平岸駅を過ぎたところで地上に出てしまうからです。そこからは、円形の屋根をもつシェルターが、終点まで延々と続きます。その「地下鉄の高架下」自衛隊前駅から徒歩5分のところにあるのが「札幌市交通資料館」。市営交通の歴史や役割などを発信するため1975年に開館した施設です。
「地下鉄高架部の補修工事にともなって2017年から閉館していましたが、工事が完了し、2024年5月にリニューアルオープンしました。この施設の改修工事を担当したのが、私の所属する交通局高速電車部施設課です」
そういって、笑顔を見せるのは、大下実歩さん。建築職として2018年に札幌市に入庁して7年目。作業着姿も板につき、仕事の話になると強い意志と情熱のようなものが感じられます。
「施設課ではそのほか、ホームへと降りていく屋根付きの出入口やトイレの改修工事、駅構内の施設・設備の更新などを行っています。地下鉄をより快適にする仕事ですね」
大学では建築を学んだ大下さん。地下での工事についての知識はなかったものの、設計・施工の協力会社とやりとりし、調整するという役割は同じ。ギャップは感じなかったと話します。
札幌市内での就職という条件のなか、
専門を活かせる市役所を目指す。
もともと理系だったという大下さん。ものづくりに興味があり、ロボコンが大好きだったといいます。自らもロボット工学を目指そうとしたものの、「私には物理学のハードルが高くて……」と、同じものづくりの分野である建築学科に進んだのだそうです。ちなみに、出身は埼玉県。
「札幌で一人暮らしをしていた祖母を支えるため、移り住みました。祖母のところに通う必要があったため、就職先は札幌市内に絞り、地域の工務店やハウスメーカーとともに、異動があっても札幌から出ることのない、札幌市役所を志望しました」
本当は、建築の構造設計に興味があったものの、就職活動では縁がなかったと打ち明ける大下さん。「建築専門でやれるなら」とチャレンジした札幌市役所から、夏前に内定通知が届くと、市職員としてやっていこうという気持ちも固まったと話します。
「公共施設の維持管理といった仕事は、何となくイメージがつきますが、入庁してみると『こんな仕事もあるんだ!』と発見の日々でした。特に、最初に配属となった部署の仕事は、想定外でしたね」
都市局建築指導部安全推進課というのが、大下さんが最初に就いた部署。札幌市内の建築を安全に保つことが仕事でした。
建築物の劣化に目配り。
点検、検査、修繕計画立案を促す。
「建築物は、当然ですが建設後、年数が経過すると補修が必要になります。なかでも、一定の規模・用途の建物は、劣化が進むと危険も生じます。そのため、築年数を考慮し、所有者や管理者に対して、点検、検査結果、および修繕計画を提出してもらい、報告を受けるというのが、安全推進課の仕事でした」
例えば、外壁のタイルなどは点検で浮きや剥離がないか調べてもらい、問題があれば、修繕計画を出してもらう。あえて、そうしたアプローチをすることで、建物を適正に維持していくきっかけにする、というのが目的なのだそうです。
「建築物をつくる際には、設計内容が関連法規や条例と合致しているかをチェックする建築確認申請が必要なことは知っていましたが、建設されて何年も経った建物のフォローまで行政が関与していることは、発見でしたね」
民間の建築物の安全性や適法性にも常に目を配り、まちの安全や美観を守るという、行政の仕事に役割の大きさも実感したと大下さんは話します。一定規模の建物の新築・解体に際して、法律で定められた資材のリサイクルを進めるための手続き業務など、環境対策に関わる仕事も担っていたそうです。
建設するために必要な条件を確認。
新たに学んでいく楽しさも。
安全推進課に2年間、所属したあと、大下さんが配属になったのは、同じ建築指導部の道路確認担当課。既存の建物の維持管理に関する業務から一変、今度は建築物を建設する前に必要となる手続きなどを担当します。
「建築基準法には、都市環境を整えるため道路、建築物の高さ、建ぺい率・容積率などを定めた集団規定と呼ばれるものがあります。その中で、交通や安全、防火などに支障をきたさないよう、建築物の敷地は同法で定める一定の道路に接することが義務付けられています。この接道義務が守られているかどうかを確認することが、入庁後2つ目となるこの部署の業務でした」
主に窓口にいて、例えば不動産会社の建築計画に対して、接道義務などの規定からそこが建築できる土地かどうか、という相談に応じることが主な業務だったそうです。
「相談される方の事業や財産にも関わることだけに、建築基準法だけでなく、道路関連法、札幌市の条例などにも目配りしながらのアドバイスが必要になるなど、複雑なケースもありましたね」
難しさも感じつつ、関連法規など必要な知識を新たに、新鮮な気持ちで学んでいくことには、楽しさも感じていたと大下さんは話します。
希望して地下鉄シェルター工事を担当。
木造による公共建築にも取り組みたい!
地下鉄関連の施設を担当する現在は、営業が終わったあと、夜間に工事を行うこともあります。工事の資材搬入も、お客様がいない夜に行うため、立ち合いも必要になります。
「そのせいもあってか、女性の少ない職場でした。ただ、今年も女性が入ってきましたし、私の実感を込めて、男女の区別なくできる仕事であることを伝えたいですね」
現場に出ても自分だけで対応できることが増え、成長を実感できるようになったと目を輝かせる大下さん。そんな姿が伝わったのでしょう、大きな仕事を任されることになりました。
「それは、地下鉄高架駅のシェルターの改修工事。『やってみたいです!』と上司に話したところ、担当にしてもらえたんです。いつも希望を汲んでくれる上司には感謝です」
大学では木造の構造を研究し、強度の高いCLT(Cross Laminated Timber)と出会った大下さん。欧米では高層建築にも使われている木質系材料なのだとか。
「札幌市が手がける公共建築も木造でできればいいなと思いますし、知識を身に付け、その第一人者の一人になりたいですね」
検証に基づいた、施設の効果的なバリアフリー化にも取り組みたいと話す大下さん。札幌のまちはこれから、大きく変わっていきそうです。
シゴトのフカボリ
札幌市職員(建築職)の一日
8:45
出勤・始業、メールチェック
9:00
工事の進捗など部内の打ち合わせ、設計図面のチェック
12:15
昼休憩
13:00
現場の進捗・工事内容の確認、定例会議
17:15
終業・退勤

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具

ヘッドライト
地下での仕事が多いため、ヘッドライトは常に必須アイテムです。工事のために電源を落とすと、文字通り、真っ暗になることも。安全確保、という以前に、これがないと、ほんとうに仕事になりません!
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

「自宅が傷んで不安」という高齢女性から電話があり、会話を続けた結果、ホッとしたという声を聞けました。市役所職員でないとできない仕事だと感じた自分がいましたし、自分の気持ちと向き合うことの大切さを知りました。

札幌市役所

都市計画、地域振興、保健福祉、市税、環境保全、産業振興、観光、スポーツ、教育、消防、交通、水道、病院事業などの幅広い分野において、190万人を超える市民の暮らしを支える地方行政全般の業務を行っている。

住所
北海道札幌市中央区北1条西2丁目
URL
https://www.city.sapporo.jp

この企業の他のインタビュー

お仕事データ

より良い暮らしのために
市町村役場職員
市町村役場職員とは
地域住民の暮らしに密着し、
行政サービスを提供。

市町村役場の職員は、警察官や消防士、教員と同じいわゆる地方公務員。地域住民の生活に密着した基礎的な行政サービスを担います。例えば、戸籍住民登録や各種諸証明の発行などの手続き、上下水道の整備、公園や緑地の整備、各種施設の運営管理など業務の幅は多彩です。一般的に「事務職」と「技術職」に分かれています。

市町村役場職員に向いてる人って?
「そのマチが好き」という気持ちがある。

丁寧で親しみやすい態度が好感を得るためのポイント。多くの自治体が厳しい財政状況にある今、市町村役場の職員はコストをかけることに対して地域住民にどんなメリットをもたらすのかを考え、住民サービスや施策を検討する必要があります。もちろん、「そのマチが好き」という気持ちは大前提です。

市町村役場職員になるためには

各自治体の採用試験を受験します。内容は市町村や受験職種によって異なりますが、事務職の場合、特に資格は必要なく、法律や一般常識などの筆記試験と、作文や面接などが行われるのが一般的。技術職は保健師や土木分野など、該当する資格や技能、専門的知識を問われることもあります。

※受験資格も各自治体で異なるため、詳しくは市町村のホームページをご確認ください。

ワンポイントアドバイス
幅広い仕事を経験。

市町村役場の事務職は、3~4年ほどのスパンで異動するケースがほとんど。それまでと全く畑違いの課で働くことは苦労も多い分、幅広い知識と経験が身につくこともメリットです。市町村役場の中の仕事を一通り覚えて、行政全体の流れを把握できて一人前と言われています。