渡辺 篤樹さん
インタビュー公開日:2024.04.18

小樽の歴史の一部を
担ってきた会社
小樽と聞いて「港町」のイメージを持つ人は多いと思います。
豪華客船の来港や、舞鶴、新潟とのフェリー航路。毎年恒例の潮まつりでは道内外から多くの人が訪れ、会場となる第3ふ頭を埋め尽くします。歴史的にも小樽港は北海道の海の玄関口としての役割を担い、経済や産業の発展に大きく貢献してきました。
今回お話を聞いた渡辺篤樹さんが働くのは、そんな小樽港の建設に長年携わっている近藤工業株式会社。その功績は小樽市の歴史の一部と言っても過言ではなく、小樽市総合博物館(運河館)には同社の歩みがパネル展示されるほどです。「港湾建設と言えば近藤工業」とその名も広く知られています。
「地元では有名」と
父の勧めで入社を決意
小樽市出身の渡辺さんが近藤工業を知ったのは、高校の先生の紹介。就職活動に取り組む中で、地元に長く貢献してきた土木工事の会社と聞き、興味を持ちました。
「高校では土木コースに在籍していましたが、土木自体に興味があったというよりは、高校に入ってなんとなく選んだという感じ(笑)。でも、せっかく学んだからには生かせる仕事に就きたいと考えていたところ、小樽で港湾建設を手掛ける近藤工業という会社があると教えられたんです。
実はうちの父親は市役所で港湾関係の仕事をしていて、近藤工業のこともよく知っていました。地元では有名な会社だからと父が勧めてくれたことも入社の決め手になりましたね」
「怖い人ばっかりだったらどうしよう…」と入社前はそんな不安もあったと言う渡辺さん。しかし、実際は優しく接してくれる先輩ばかりで、職人さんたちとのコミュニケーションも新鮮で楽しかったと笑顔で振り返ります。
安心して利用できる
港を守ることが使命
近藤工業が手掛ける土木工事は港湾に関するものが中心。陸上の工事に携わることもありますが、その数はわずかだそう。大きなクレーンが付いた起重機船という船を自社保有し、小樽港をはじめ、美国漁港や古平漁港など、後志エリアに点在する漁港の工事も多く手掛けています。
「港の機能を維持するための改良工事が多いです。老朽化した岸壁を作り直したり、古くなったテトラポットを交換したり。自然の力は皆さんが想像する以上に大きくて、巨大なテトラポットが風と波で吹き飛ばされて亀裂が入ったりすることも珍しくありません。港の整備を通じて、港湾関係者や漁師さんが安全に利用できるようにするのが私たちの仕事です」
ちなみに渡辺さんの役割は現場の司令塔である「施工管理」。職人さんたちに指示を出したり、作業の進捗をデジカメで記録したり、スケジュール管理や役所への書類作成なども担います。
ダイナミックで迫力ある工事は
海洋土木ならでは
渡辺さんが入社以来携わっているのが小樽港第3ふ頭の工事です。第3ふ頭はJR小樽駅のほぼ正面に位置し、潮まつりの会場としてもお馴染み。周辺施設の整備と一体となった再開発プロジェクトが進んでいます。
「大型船が接岸できるように海底を掘り下げたり、古くなった岸壁を修復したり、第3ふ頭が生まれ変わっていく様子を目の当たりにしてきました。ひとつの工事が終わるたびに達成感を味わえるのがこの仕事の醍醐味。再開発は現在終盤に差し掛かっていて、あと数年ですべての工事が完了します」
これまでで特に印象的だったのは、老朽化した岸壁を一度取り壊して、新しく作り直す工事だという渡辺さん。
「海上の作業船から大きな板を海底に打ち込んで一時的に水をせき止めるんですが、鳴り響く轟音と水しぶきの迫力は今も鮮明に覚えています。こうしたダイナミックな作業に携われるのも当社ならではだと感じています」
先輩たちの経験と
最新のテクノロジーを融合
港湾建設に携わり90年以上の歴史を持つ近藤工業。同社には港づくりを知り尽くした技術者が揃い、そのノウハウを受け継げるのも魅力だと渡辺さんは語ります。
「社内には、波や風の様子から今後の天気を予想できるくらい海のことを知り尽くしたプロフェッショナルが何人もいます。自分はまだまだそうした先輩たちには及ばず、天気予報を見て判断するのがやっとです(笑)」
一方同社では、最新のテクノロジーを活用した「建設DX」にも力を入れており、そうした部分で渡辺さんへの期待は大きいよう。
「水中ドローンを使って海底の様子を調査したり、3Dデータに基づいて重機を自動操縦したり。上司からも若手の自分が率先して最新機器を使いこなしてほしいと言われています。先輩たちが積み重ねてきたノウハウとも融合させて、地元のシンボルである小樽港を守っていければと思っています」
シゴトのフカボリ
海洋土木施工管理の一日
7:00
現場事務所に出勤
7:10
打ち合わせ
7:30
朝礼
8:00
現場写真撮影
12:00
昼休み
13:00
打ち合わせ
15:00
測量など
16:30
書類作成
17:30
退勤

シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

港づくりはチームプレー。一人ひとりの知識や技術も大切ですが、笑顔のコミュニケーションで結束力を高めることが重要だと思っています。

お仕事データ

工事現場の司令塔
施工管理
施工管理とは
工事を円滑に進めるためには
欠かせない仕事。

建設工事や土木工事の現場で発注者と実際に工事を行う職人さんとの間に入り、人や資材の手配、スケジュール調整、予算管理など、工事を安全かつ円滑に進め、目的を実現するためのさまざまな業務を行います。大きな施設を建てるほど、工程も複雑になるため施工管理の重要性は大きくなります。

施工管理に向いている人って?
思い通りにならなくても慌てない。

現場での橋渡し役を担うことが多いため、コミュニケーション能力は欠かせません。スケジュールやお金の管理も行うので、計画的に物事を進められる人に向いている仕事です。工事には不測のトラブルもつきものなので、状況に合わせて対応できる柔軟性がある人も向いているでしょう。

施工管理になるためには

小さなリフォーム工事から大規模な土木工事まで施工管理の領域は広く、一般的には工事会社などに入社して、現場での仕事を覚えることになります。施工管理には「施工管理技士」という国家資格があり、工事の内容によって建築施工管理技士、電気工事施工管理技士、管工事施工管理技士など6種類に分かれています。大規模な現場の管理をするためにはこうした資格も必要となります。

ワンポイントアドバイス
分野が異なる工事でも活躍可能。

施工管理の仕事は一般的には馴染みが少ないのですが、工事現場には欠かせない仕事です。建設業界で働く上で「施工管理技士」の資格が役立つ場面は多く、取得しておくと出世や転職にも有利と言われています。

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