三浦 大輔さん
インタビュー公開日:2019.07.02

一つひとつ手づくりの細かい作業で
ボデーを仕上げてトラックが完成。
街でよく目にする、トラックやダンプ。どれも、同じように見えますが、ちょっとだけ注意深く観察してみてください。デザインや形、つくりが少しずつ違うことに気づくはずです。
これらの車は、自動車メーカーが製造していますが、できあがった時には運転席とエンジンがセットになったキャブと呼ばれる部分と、後ろのタイヤがつくシャーシと呼ばれるフレームしかありません。たとえばトラックなら、そこに平ボデー(荷物を載せる平らな台)やバンボデー(扉のついた箱型の荷台)を載せることで、はじめて完成となります。
平ボデーやバンボデーは、ほとんどが専門の製作会社の手によるオーダーメイド。三浦大輔さんは、北海道を代表する製作会社・新明和製作所で、重要な工程であるプレス加工を担当しています。
「一つひとつ、手づくりで仕上げる細かい仕事。でも、そこに楽しさを感じています」
ミリ単位の正確さでつくる部品
ピタッと完成した時の達成感!
新明和製作所は、主にトラックのボデー製作と、ダンプの荷台の補強や塗装を行う二次架装と呼ばれる業務をてがけています。鉄、アルミ、ステンレスなどを加工し、塗装・仕上げを施して、車両にセットするまでのすべての工程を自社工場ラインで行っています。
「ほかにも、トレーラーを引っ張る車両の補強や、据え付ける道具箱の製作など、扱うものはさまざま。ほんとうに毎日、違うものをつくっていますね」
三浦さんが担当するプレス加工は、金属の板から必要な部材を切り出し、曲げ加工、溶接などを行ってボデーの部品を製造する工程。
「ボデー製作の第一歩となる工程であり、ここで寸法が狂うと、後の作業ができなくなります。図面に合わせて、ミリ単位で仕上げる正確さが求められます」
平面に描かれた図面から立体的な姿を把握し、必要な素材の大きさ、加工のしやすさなどを判断できる力が必要なのだとか。
「正直、これは難しいなと感じる形状のものもありますが、集中して製作にあたり、寸法通りにピタッと完成した時には感動です!」
仕事の一つひとつに楽しさを感じ
ものづくりが好きな自分を発見。
高校卒業後、三浦さんは建築を学んでいましたが、自分の志向とは違うと感じはじめて方向転換。しばらく、アルバイトをしながら将来を考えていたそうです。
「その時に、今の会社で働いている幼なじみから当社を紹介されました。仕事内容はよくわからなかったのですが、3カ月ほど研修を兼ねて業務の手伝いをするうちに楽しさを感じるようになり、入社を決意したんです」
バンボデーの内側に木材を張って仕上げる工程からスタートし、徐々に道具の使い方などを覚え、先輩の補助として他の工程も経験。少しずつ、全体の流れをつかんでいきました。
「一つひとつが興味深く感じられました。自分はものづくりが好きだったんだ、ということに気づき、もっと覚えたい、技術を身に付けたいという向上心が、どんどん高まっていきましたね」
完成したトラックが走っている姿を目にする時、自分が手がけた仕事が形になったという実感がふつふつと湧いてくる瞬間なのだそうです。
話しやすく、聞きやすい先輩のもと
高度な技術を身に付けていきたい。
加工機械や溶接設備、大きくて重量のある金属の素材などを扱う工場だけに、何よりもまず、怪我をしないよう、日々、最新の注意を払って業務を行っているという三浦さん。
「ミスをしてしまうこともありますが、そんな時には、忘れないように必ずメモを取り、同じ間違いを繰り返さない。入社して8年になりますが、今でも心がけていることです」
きちんと記録しておけば、次に同じような業務を行う際の参考にもなるそうです。技術職は、自分で見て、感じて覚えることも大切。それも仕事を通して知ったことだと言います。
「もちろん、先輩はしっかり指導してくれますし、ヒントも与えてくれます。見た目はちょっと荒っぽい感じの人が多いですが(笑)、とても話しやすく、なんでも聞きやすいので、安心して仕事に取り組めています」
ステンレス製でピカピカボデーのトラックを見かけることがありますが、その仕上げにはかなりのテクニックが必要なのだとか。経験を積み、より高度な技術を身に付けていきたいと、三浦さんは意欲をみせます。
常に話をし、工夫し合うことが
質の高いものづくりにつながる。
自社でつくりあげるボデーのほか、同業の会社から依頼されるパーツの製作も三浦さんの担当。毎日、注文が舞い込むのだそうです。
「レーザー加工機を使って金属板に社名などを抜いたり、ボデーの両脇に並んでいるマーカーランプのフレームをつくったりとさまざまなオーダーに対応しています」
なかには、形状的に加工が無理なケースも。そんな時は代替案を考え、依頼主と話をすることも多いと言います。
「技術と同時にコミュニケーションも大事な仕事ですね。工場の仲間とも常に話をし、工夫して提案し合うことで、より質の高いものづくりができるのだと思います」
柔軟な発想と迅速な対応。その仕事ぶりには社外からも信頼が厚く「三浦さんいる? 相談があるんだけど」と、よく電話が来るのだとか。
休日はロードバイクに乗りに行くという三浦さん。走っているとトラックに目がいきます。
「きれいな仕上がりだなとか、どの部分で溶接しているのかな、とか。職業病ですね」
そう言って笑う三浦さん。ものづくりの血が騒ぐ瞬間です。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

ボデーの製作は図面通りに行いますが、加工上の工夫が常に必要。工場の仲間とも、部品の依頼主とも常にコミュケーションを図ることが大切です。声を掛け合うことで、お互いの調子もわかるし、危険防止にもなります。

株式会社 新明和製作所

創業から半世紀以上の歴史を誇る、北海道を代表するトラックボデーメーカー。設計から製作までを一貫して行い、北国の厳しい環境に負けない高い品質で信頼を得ています。

住所
北海道札幌市手稲区曙2条4丁目2番64号
TEL
011-682-0411
URL
http://www.shinmeiwa.co.jp

お仕事データ

工場内で製品を生産。
製造工
製造工とは
製品の加工や組み立て、
メンテナンスなどものづくりに携わる仕事。

製造工は家電やパソコン、電子機器といった機械製品から、住宅用資材、紙、プラスチック用品、さらには施設の一部に使われる大型製品まで、多種多彩なものづくりに携わる仕事です。主に工場のライン作業によって各パーツを加工したり、部品を組み立てたり、さまざまな工程を経て一つの製品を完成させます。一方で、繊細な手作業によってものづくりを行う職場も少なくありません。「つくる」だけではなく、製品の最終検査や梱包・出荷、納品後のメンテナンスや修繕を担うこともあります。いずれの作業もものづくりの世界には欠かすことができませんが、未経験者にも門戸を開く企業が多いことからチャレンジしやすい仕事です。

製造工に向いてる人って?
「ものづくりが好き」で、
根気強さと注意深さを持っている人。

製造工には「ものづくりが好き」という気持ちが欠かせません。作業自体は決められたマニュアルやルールに沿うケースが多いことから、同じ作業をコツコツと続けられる根気強さも必要です。また、機械で加工した部品に不良がないかチェックしたり、製品の最終検査をしたりすることもあるため、注意深いタイプの人も向いているでしょう。

製造工なるためには

製造工になるために必要な資格はありません。多くの場合、工業系の高校や専門学校、短大・大学を卒業後、製造工場を持つ会社に就職するのが一般的です。知識やスキルは入社後の教育・研修によって身につけられるため、未経験からでも挑戦しやすい仕事といえるでしょう。職場や手がける製品によっては、後々「フォークリフト」や「玉掛け」などの資格取得をすすめられることがあります。

ワンポイントアドバイス
マルチスキルを持った製造工が
今後のカギを握る存在に!?

これまでの製造工は、一人が一つの持ち場だけを担当するケースが一般的でした。けれど、ここ最近は複数台の機械を操作できたり、多くの作業や工程を担える技術を身につけたり、マルチスキルを習得させる企業が増えているようです。そうすることで皆で仕事を分散して業務量を平準化できる他、チームワークや組織の柔軟性が高まるといわれています。今後はマルチスキルを持った製造工が会社のカギを握りそうです。