相馬 歩さん
インタビュー公開日:2020.12.22

家族にラクをさせたくて、
「社長」を目指しました。
「中国料理布袋」といえば、拳ほど大きなザンギのおいしさで知られる有名店。とりわけ、本店はお昼時ともなれば、多くの常連さんやファンが代わる代わる詰めかけます。その忙しい店内を切り盛りするのが店長の相馬歩さん。函館のご出身です。
「僕はもともと社長になりたかったんです」
ともすれば軽い印象に受け取られがちな第一声ですが、続きの言葉を聞けば、なるほど納得。
「小学生のころに両親が離婚し、父と暮らす道を選びました。兄妹全員が母についていってしまったら、縁が切れてしまう気がして。ただ、ほどなく父が体を壊してしまったため、お金にはかなり苦労したほうなんです。でも、他人や環境のせいにするのは性分ではありません。だったら、自分が稼ぎ頭の社長になり、家族にラクをさせたいという思いを抱き続けていました」
世の中はお金がすべてでは決してないけれど、家族のためには稼ぎも必要。相馬さんが身をもって感じた仕事の原点です。
人と関わりのある仕事は、
すべて「接客」 に通じます。
高校卒業後、相馬さんは札幌のホテルにある洋食レストランで働きました。もともと、人に尽くして感謝の言葉をかけてもらえる「接客」が好きだったからです。
「ホテルのレストランでは品格のある質の高いサービスを学べた他、生まれて初めて企画書なるものを書いて知恵熱を出しました(笑)。ただ、自分のプランからスイーツの売上がグンと跳ね上がる手応えが得られたのも貴重な経験です」
ホテルのレストランに2年半ほど勤めた後は、違う世界にも触れるためにあえて体力勝負の警備会社へ。とはいえ、交通誘導や車を止めて事情を話す業務も「結局は人と関わるので接客なんですよね」と笑います。夜は居酒屋でもダブルワークするなど精力的に働いた…ことが引き金になったのでしょうか、相馬さんは体を壊して倒れてしまいました。
「僕が患っていたのは難病指定されている免疫障害。ほぼ寝たきりの日々が続きました」
持病を抱えていても、
布袋は受け入れてくれました。
相馬さんは持ち前のポジティブな思考と不屈の精神で「必ず社会復帰して働く」と闘病を続け、3年後にはついに退院。ただし、両股関節が人工関節に置き換わり、体を動かす仕事は禁じられたため、しばらくはコールセンターのアルバイトで食いつなぎました。
「そんな時、手を差し伸べてくれたのが函館に住む祖母。実は、中国料理布袋の会長が僕らと親戚だったこともあり、新店舗のオープンに向けてホールスタッフの人手を探していることを教えてくれました。股関節のリハビリも終わったタイミングでしたし、自分の好きな接客に携われる願ってもないチャンス。持病を抱えていても手伝えることがあれば働きたいと申し出ました」
相馬さんは体を慣らすためにも、まずは本店で勤務をスタート。ところが、キビキビとした動きと人当たりの良い接客によってメキメキと頭角を現しました。本来は新店舗に配属されるはずでしたが、そのまま留まるよう白羽の矢が立ったのです。その後、すぐに社員登用されたというのも納得!
ホテルとはまったく異なる、
フランクなやり取りも大切。
相馬さんはホールでの配膳や接客だけでなく、店舗のプロモーションや企画などさまざまな業務を担当。スタッフの育成にも徐々に携わるようになりました。
「僕は自分に厳しい分、人にも厳しいほうです。年齢も性別も関係なく、叱る時は叱りますが、褒める時は相手が頬を真っ赤に染めるくらい讃えます。もちろん、僕に非がある場合は真っ先に謝り、全責任を取るというスタンス。暑苦しいでしょう(笑)」
一方、ホテル仕込みのホスピタリティが通用しない一幕も。歴史が塗り重ねられた店内。少し傾いだ床。そして、「コップ持ってきたら自分で注ぐから」「オレ、後回しで大丈夫」といったフランクなやり取り。最上級の佇まいや立ち居振る舞いではなく、店舗とお客様の素朴で温かな関係が愛される理由でもあると痛感することも多々ありました。
「ホテルのサービスとは異なる、より親しい接客が大切な場もあると学んだ経験です」
この先はサービス力を高める
人材教育に力を入れたいです。
中国料理布袋のメニューは、お手頃でボリューム満点。創業者である会長の「儲けを度外視しても、おいしいものをお腹いっぱい食べてほしい」という思いが反映されています。
「それがお客様に伝わっているからこそ、代々通ってくれる常連さんも多いんです。コロナ禍でも数え切れないほどの応援と支えのおかげで生き残ることができました」
相馬さんは店長に昇格して約2年。この理念を守りながらも、次の一手としてサービス力を高める人材育成に力を入れたいと考えています。
「多くのお客様がウチの忙しさを理解してくださる一方で、そのやさしさに甘えるだけではダメ。スピードとおいしさに丁寧な接客が加われば、もっと愛されるはずなんです」
なるほど、ココで最後の質問。社長になるという目標は?
「もちろん、最終目標は独立。ただ、布袋のネットショップや広告宣伝など、現場ではない部分を支える業務で会長や社長に恩返しできる会社を作りたいです!」
シゴトのフカボリ
飲食店店長の一日
9:00
出勤/事務作業
10:30
オープン準備
11:00
接客・サービス
15:00
休憩
17:00
接客・サービス
20:00
退勤
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

「じんざい」という言葉には4段階あると考えています。「人罪」は足を引っ張る怠け者。「人在」はただいるだけの指示待ちタイプ。「人材」は普通に働く人。皆さんには、企業にとって手放したくない財産である「人財」を目指してほしいと思います!

株式会社MISK 中国料理布袋 本店

開業から20年以上の中華料理店。「布袋といえばザンギ、ザンギといえば布袋」と称されるほど、大ぶりな一皿が有名。もちろん、その他の料理や定食もお手頃でボリューミー。札幌市内に「中国料理布袋 赤れんがテラス店」、姉妹店の「寿司・中国料理 福禄寿」と「布袋点心舗 弁財天」も展開。

住所
北海道札幌市中央区南1条西9丁目1-3
TEL
011-272-4050
URL
https://zangihoteigroup.com/

お仕事データ

おいしさと快適な時間を提供。
飲食店スタッフ
飲食店スタッフとは
接客や調理によって、
お客様に「おいしい時間」を。

飲食店の仕事は、多くの場合「ホール」と「調理」に分けられています。ホールスタッフは主に接客サービスを担当。客席への案内や注文のお伺い、配膳、会計などを行います。調理スタッフは料理の下ごしらえや味付け、調理、盛り付けに加え、キッチンの清掃や調理用具の手入れなども担うことが多いでしょう。さらに、飲食店店長がホール・キッチンスタッフのマネジメントや教育を手がけ、売上の管理や食材の発注、営業計画といった幅広い業務も守備範囲に据えながら店舗全体を運営しています。店舗の規模によっては各ポジションを兼務することもあるでしょう。これら飲食店スタッフはお互いに連携しながら、お客様に「おいしさ」と「快適な時間」を提供しています。

飲食店スタッフに向いてる人って?
明るく清潔感があり、
チームワークを大切に働ける人。

飲食店スタッフに共通して必要なのは食に対する興味はもちろん、おいしい料理とともに快適なひとときを提供したいという気持ちです。また、接客や調理をともなう仕事である以上、明るく清潔感のある人が求められます。ランチタイムやディナータイムといった忙しい時でも、お客様にスピーディーに料理を提供しなければなりません。そのため、チームワークを大切に、効率良く作業を進める力も必要です。

飲食店スタッフになるためには

飲食店スタッフになるために必要な資格はありません。高校や専門学校、短大、大学を卒業後、希望する飲食企業に入社するのが一般的です。その他、調理専門学校で調理の基礎や調理師の資格を身に付けたり、栄養士養成施設として指定認可された学校で栄養士の資格を取ったり、食に関連する学校に進んだ後に就職するコースを選ぶ人も少なくありません。ホールスタッフや調理スタッフとして経験を積んだ後、飲食店店長を目指すことも可能です。

ワンポイントアドバイス
スタッフのマネジメントが
とりわけ大切な仕事。

飲食店店長を筆頭に、ホールや調理のリーダー職を務める飲食店スタッフにとって、人材のマネジメントは売上に関わる重要な業務。部下やアルバイトをまとめ、一人ひとりが生き生きと働けるよう管理・教育することでやる気と能力が引き出されます。具体的には人員が不足しないように配慮しながら休み希望を取り入れたシフトを作成したり、元気のない人に声がけしてモチベーションを高めたり、仕事への意欲を促すことでお客様への貢献につなげることが大切です。

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