千石 凱土さん
インタビュー公開日:2022.04.21

暮らしに不可欠な「炉」を守る。
ほんの一握りの職人たち。
高温で物を燃やしたり、溶かしたりする施設を「炉」と言います。身近なものではゴミの焼却炉がそう。人の住むところには必ずと言っていいほどゴミの焼却施設があり、施設の中には焼却炉があります。札幌のような大都市はもちろん、小さな町や村にもたいてい清掃工場やクリーンセンターが置かれて、社会科見学などで訪れたことがある人も多いと思います。
焼却炉は、私たちの暮らしに不可欠なものですが、その炉を作ったり、整備をしたりする「築炉」の会社は非常に少なく「絶滅危惧種」と言われるほど。そのうちのひとつが北雄ファーネスという会社です。
「『築炉』なんて言葉、聞いたこともありませんでした」と笑うのは、2021年5月に入社した千石凱土さん。出身は伊達市。前職は地元・伊達市の建設会社でした。
北雄ファーネスに入社した理由は「全く知らない世界だからこそ、むしろ興味がわいた」とのこと。手に職をつければ長く活躍できるのではと、感じたと振り返ります。
計画的な「炉」の維持管理に取り組む。
社会生活を陰で支える存在。
仕事の多くは既にある炉の補修やメンテナンスです。特に焼却炉は、万一、壊れてしまうとゴミの処理ができなくなり、生活への影響が多大。そのため、定期的にメンテナンスを行う計画が立てられ、トラブルを未然に防いでいるのです。
入社当時は会社が保有する工場で働き、炉の基本的な仕組みや構造について学んだという千石さん。その後は少しずつ実際の現場で炉の補修工事に携わっています。
「自分はまだ経験が浅いので、今は『手元(てもと)』と言って、先輩の作業をそばでアシストする仕事に携わっています。作業に使う道具を準備したり、資材を手渡したりするのがメインです。先日はじめて、炉内の壁に『キャスタブル』というセメントのような材料を吹き付ける作業を経験させてもらい、難しかったけど、自分の手で炉を作る楽しさも感じました」
担い手の少ないニッチな技術だからこそ、
仕事の依頼は全国各地から。
築炉会社は全国に300社ほどしかなく、そのため、北雄ファーネスへの依頼は道外からも多く舞い込みます。北海道はもちろん、南は九州、沖縄まで。仕事の依頼があると大型車に資材や工具を積み込んでフェリーで移動。5〜10名程度のスタッフが1チームとなり、2、3週間かけて現地での作業に携わります。
初めは親しい友達に会えないことなどから、道外出張に消極的だった千石さんですが、今ではむしろ、新しい土地を訪れることを楽しみに感じているそう。
「これまであまり道外に出かけたことがなかったので、出張とはいえ、全国各地に行けるのを楽しみに感じるようになりました。先日行った山梨県では、初めて見る富士山の大きさに感動して(笑)。出張先では、先輩たちと土地の名物を食べに行くこともあり、チームの絆が深まるのを感じます」
職人のタイプや適性を見極め、
得意を伸ばしていくスタイル。
代表の石郷岡隆さんいわく、仕事の依頼は焼却炉などの製造メーカーや、耐火資材などを扱う材料メーカーから寄せられるのが一般的だそう。作業指示書と図面が提供され、その指示に基づいて、作業を進めていくといいます。
「劣化した部分を砕いて取り除き、そこに新しい壁を作るというのが補修工事の大まかな流れです。一口に補修と言ってもさまざまな工法があり、セメントを吹き付けるようなやり方もあれば、耐火レンガを積んでいくようなやり方、型枠を組んでセメントを流し込むようなやり方もあります。それぞれ作業内容も異なるので、職人のタイプや適性を見極めて、その人の長所を活かせるような作業を担当してもらっています」
実は前職では「あまりきちんと仕事を教えてもらえなかった」と振り返る千石さん。
「このまま働いても手に職をつけるのは難しいと感じたことも、転職の理由なんです。当社は先輩たちがいろいろな作業にチャレンジさせてくれますし、覚えることは多いのですが、自分の成長を実感できるところが気に入っています」
やりがいを感じるのは「これから」
社会に必要とされる築炉職人を目指す。
会社で働く魅力について「他では身につけられない技術が身につく」と話す千石さん。入社当初よりはいくぶん作業に慣れたものの、まだまだ先輩の背中は遠いと、はにかみます。
「世の中にこんな仕事があることすら知りませんでしたが、実際に携わってみたことで、暮らしに欠かせない仕事なんだと実感するようになりました。ニッチな世界ですが、それだけに、手に職をつければ長く活躍していけると感じています」
「仕事のやりがいは?」と尋ねると、「まだそこまで行っていないです(笑)」とニヤリ。せっかく出合ったこの会社で経験を重ね、一人前の築炉職人と言われるように頑張りたいと、笑顔で締めくくってくれました。
シゴトのフカボリ
築炉メンテナンススタッフの一日
8:00
出勤 ミーティング、作業確認
8:30
補修作業
10:00
休憩
10:30
補修作業
12:00
昼休憩
13:00
補修作業
15:00
休憩
15:30
補修作業
17:00
作業終了 退勤
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
ミリ単位の精度で仕上げます!
一口に築炉の仕事と言っても、そこには大工のような技術や左官のような技術など、さまざまな技術が必要。写真のコテ類は補修した焼却炉の壁面をきれいに整えるためのもの。発注者からの図面に基づいて、ミリ単位の精度で仕上げていきます。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

どんな仕事でも、慣れるまでは大変だし、苦労も多いもの。でもせっかく始めたからには責任を持って取り組むことで、やりがいも大きくなっていきます。

株式会社 北雄ファーネス

全国でも数少ない築炉工事の専門会社。二代目社長が就任し、今ドキの働きやすさをしっかり整備しているのが自慢。待遇や教育体制も令和スタイルを取り入れています。

住所
北海道札幌市白石区北郷1条1丁目7番1号(本社)
TEL
011-871-8022
URL
https://hokuyu-furnace.com/

お仕事データ

工場内で製品を生産。
製造工
製造工とは
製品の加工や組み立て、
メンテナンスなどものづくりに携わる仕事。

製造工は家電やパソコン、電子機器といった機械製品から、住宅用資材、紙、プラスチック用品、さらには施設の一部に使われる大型製品まで、多種多彩なものづくりに携わる仕事です。主に工場のライン作業によって各パーツを加工したり、部品を組み立てたり、さまざまな工程を経て一つの製品を完成させます。一方で、繊細な手作業によってものづくりを行う職場も少なくありません。「つくる」だけではなく、製品の最終検査や梱包・出荷、納品後のメンテナンスや修繕を担うこともあります。いずれの作業もものづくりの世界には欠かすことができませんが、未経験者にも門戸を開く企業が多いことからチャレンジしやすい仕事です。

製造工に向いてる人って?
「ものづくりが好き」で、
根気強さと注意深さを持っている人。

製造工には「ものづくりが好き」という気持ちが欠かせません。作業自体は決められたマニュアルやルールに沿うケースが多いことから、同じ作業をコツコツと続けられる根気強さも必要です。また、機械で加工した部品に不良がないかチェックしたり、製品の最終検査をしたりすることもあるため、注意深いタイプの人も向いているでしょう。

製造工なるためには

製造工になるために必要な資格はありません。多くの場合、工業系の高校や専門学校、短大・大学を卒業後、製造工場を持つ会社に就職するのが一般的です。知識やスキルは入社後の教育・研修によって身につけられるため、未経験からでも挑戦しやすい仕事といえるでしょう。職場や手がける製品によっては、後々「フォークリフト」や「玉掛け」などの資格取得をすすめられることがあります。

ワンポイントアドバイス
マルチスキルを持った製造工が
今後のカギを握る存在に!?

これまでの製造工は、一人が一つの持ち場だけを担当するケースが一般的でした。けれど、ここ最近は複数台の機械を操作できたり、多くの作業や工程を担える技術を身につけたり、マルチスキルを習得させる企業が増えているようです。そうすることで皆で仕事を分散して業務量を平準化できる他、チームワークや組織の柔軟性が高まるといわれています。今後はマルチスキルを持った製造工が会社のカギを握りそうです。

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