桜井 誠さん
インタビュー公開日:2023.01.20

ものづくりを趣味から仕事に。
地元の産業を支える企業に入社。
ものづくりが趣味だった祖父の影響で、自身も何かを作ることが好きになったという桜井誠さん。「祖父は車のタイヤを加工して鶴を作ってくれたり、私も小学生のころに卵の殻を砕いてモザイク画を描いたりしていました。その延長で、工業高校に進学しました」
今の仕事につながる旋盤(加工したい金属を回転させて切削する機械)や溶接の技術を学び、学校推薦で島本鉄工への就職が内定。島本鉄工は、漁業が盛んな釧路で船のエンジン修理からスタートした会社。地元では船舶関係の機械・部品製造を始め、さまざまな産業機械の製造で知られています。「親も、『島本さんはすごいところだね!』と喜んでいました」と桜井さん。
入社して半年は研修期間として、現在勤務している星が浦工場と本社の仲浜町の工場を行き来し、製造やメンテナンスについていろいろな仕事を経験。桜井さんの希望と適性を考慮して、機械加工により各種金属製品を製作する部署に配属されました。
注文に応じ、さまざまな部品を製造。
金属加工の奥深さを感じています。
桜井さんが所属する部署では、旋盤や溶接などの技術で金属を加工し、さまざまな機械の部品を製作しています。同じものを大量に作る注文が入ることもあれば、顧客からの細かい注文に応じることも。早朝に「漁で使う機械が壊れ、明日使いたいから今日の夜までに直せないか?」と相談が入り、壊れた部品や機械を見てから製作する、といった注文にも柔軟に対応しています。
「お客様に、漁船をいかにスムーズに出してもらうかというのが社長のプライド。あらゆる注文に応じられるのが当社の強みです」と桜井さんも胸を張ります。
加工方法も、決められた通りにやればいいというものではなく、効率よく正確に作れる方法は時と場合によって変わるため、その都度考える必要があります。
「入社当初は、『学校で学んだことは基礎中の基礎だったんだな』と実感し、できない悔しさに落ち込んだこともありました。改めて先輩たちの技術はすごいなと思い、教えてもらいながら技術を身に付けていきました」
緻密さを求められる金属加工に、
楽しさと機械への愛着を持って。
金属加工の難しさは、100分の1ミリ単位の誤差が機械として組み立てた時に不具合に繋がってしまうため、緻密な作業が求められること。冬の工場内では局所暖房を使いますが、それで温まりすぎると金属が伸縮して大きさが狂ってしまうため、寒い中で作業をせざるを得ないといいます。
桜井さんは、そういった金属加工そのものに楽しさを見出しています。「硬い金属が機械を使うことで簡単に削れたり、軟らかくして曲げることができることが、今でも楽しいなと思います」。加工に使う機械も愛着を持って大切に扱い、「いいぞ!」「ありがとう」などと話しかけることもあるとか。
難しい部分は先輩に相談し、コミュニケーションを取りながら仕事を進めていると言い、「時々、部長が『こんな注文が来たんだけど……』と言って、申し訳なさそうに隠れながら仕事を持ってきます(笑)」と、難しいオーダーにもユーモアを交えて話す和気あいあいとした職場の雰囲気が伺えます。
主任になりマネジメントを勉強中。
言葉で伝えにくい部分も試行錯誤。
主任に昇格して、半年になるという桜井さん。できる仕事の幅が広がり、今度は部下に仕事を割り振りしていく役割も加わりました。
「マネジメントもして、自分の作業もやって……となると頭が回らなくなり、人生初の白髪が生えました(笑)。後輩に仕事を教えるのも、機械の使い方は『ここはこれくらいの力加減で締めて……』など感覚的に経験を通して、身に付けなければならない部分も多いものです。そのため言葉ではうまく伝えられず、試行錯誤の日々です」そんな時も上司や先輩に相談しながら、管理職としての力量も身に付けています。
「作業の方法も一つではなく正解はないので、私も先輩に聞きつつ迷いながら自分のやり方を見つけてきました。後輩にも、まず自分で良いと思った方法でやってもらい、それから『こうした方がもっと良くなるよ』とアドバイスするように心掛けています。その積み重ねで、自分のやり方を見つけてくれたらいいと思っています」
緻密なものづくりが好きかどうか、
コミュニケーションも大切!
桜井さんにこの仕事に向いている人は?と尋ねると、「ものづくり、特に考えながら作ることが好きな人だと思います。また、緻密な作業を面白いと思うかどうかが分かれ目かもしれません。私は難しいものが一発でできるとテンションが上がり、その日は楽しくて仕方なくなります(笑)」と、ものづくりが心底好きなことが伝わる答えが。
さらに、こう付け加えます。「うちの職場でも、お互いに声を掛け合い、コミュニケーションを取りながら作業をしていますが、そうすることで楽しく長く仕事ができると思います。会話によって信頼関係が築けるので、そこはどんな職業でも大事な部分なんじゃないかと思います」
会社では現在、新しい機械のプログラムを学ぶために順番に本州へ研修を受けに行っていると言い、加工技術も日進月歩です。今後は、「今まで以上にマルチスキルになり、周りから『助かった』と言われる人材になりたい」と意欲を燃やす桜井さん。周囲の人に磨かれながら成長を続けています。
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
職人の目を支えるメガネ
緻密な金属加工をする職人にとって、見え方はとても重要。少しでもメガネが合わないと感じると、すぐに替えに行きます。普段用(上)と作業用(下)を使い分けています。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

何事も、やってみないとスタートラインに立てません。難しそうだからと躊躇せず、失敗したら先輩に教わって次につなげればいいので、まず、やってみましょう!

島本鉄工株式会社

1933年に船のエンジン修理工場として創業以来、内燃機関整備、一般産業機械や鋼構造物の設計、製作、据付等を通して地域の基幹産業を支えています。

住所
(本社)北海道釧路市仲浜町6番23号
(星が浦工場)北海道釧路市星が浦南3丁目1番8号
TEL
(本社)0154-23-5445
URL
http://kecst946.ec-net.jp

お仕事データ

工場内で製品を生産。
製造工
製造工とは
製品の加工や組み立て、
メンテナンスなどものづくりに携わる仕事。

製造工は家電やパソコン、電子機器といった機械製品から、住宅用資材、紙、プラスチック用品、さらには施設の一部に使われる大型製品まで、多種多彩なものづくりに携わる仕事です。主に工場のライン作業によって各パーツを加工したり、部品を組み立てたり、さまざまな工程を経て一つの製品を完成させます。一方で、繊細な手作業によってものづくりを行う職場も少なくありません。「つくる」だけではなく、製品の最終検査や梱包・出荷、納品後のメンテナンスや修繕を担うこともあります。いずれの作業もものづくりの世界には欠かすことができませんが、未経験者にも門戸を開く企業が多いことからチャレンジしやすい仕事です。

製造工に向いてる人って?
「ものづくりが好き」で、
根気強さと注意深さを持っている人。

製造工には「ものづくりが好き」という気持ちが欠かせません。作業自体は決められたマニュアルやルールに沿うケースが多いことから、同じ作業をコツコツと続けられる根気強さも必要です。また、機械で加工した部品に不良がないかチェックしたり、製品の最終検査をしたりすることもあるため、注意深いタイプの人も向いているでしょう。

製造工なるためには

製造工になるために必要な資格はありません。多くの場合、工業系の高校や専門学校、短大・大学を卒業後、製造工場を持つ会社に就職するのが一般的です。知識やスキルは入社後の教育・研修によって身につけられるため、未経験からでも挑戦しやすい仕事といえるでしょう。職場や手がける製品によっては、後々「フォークリフト」や「玉掛け」などの資格取得をすすめられることがあります。

ワンポイントアドバイス
マルチスキルを持った製造工が
今後のカギを握る存在に!?

これまでの製造工は、一人が一つの持ち場だけを担当するケースが一般的でした。けれど、ここ最近は複数台の機械を操作できたり、多くの作業や工程を担える技術を身につけたり、マルチスキルを習得させる企業が増えているようです。そうすることで皆で仕事を分散して業務量を平準化できる他、チームワークや組織の柔軟性が高まるといわれています。今後はマルチスキルを持った製造工が会社のカギを握りそうです。