斉藤  凌太さん
インタビュー公開日:2023.08.02

お客さまを迎え、テキパキと調理
人気のラーメン店で副店長を務める
「いらっしゃいませ。3名さまですか? こちらの席へどうぞ」
そう言うが早いか厨房へとって返し、中華鍋を手にする斉藤凌太さん。テキパキと、無駄のない動き。まさに平常心といった涼やかな表情で調理を進めます。湯気を立てる、濃厚な香りの味噌ラーメンが出てくるまで、ほんの数分ほどでした。札幌ラーメンの代名詞である味噌ラーメン。市内に数多くひしめくラーメン店のなかでも、白糀味噌+白味噌のブレンドによる独自のパンチのきいた味わいで安定した人気の『白樺山荘』。真駒内本店の厨房に斉藤さんがやってきたのは3年前の2020年のことでした。
「入社後は、札幌らーめん共和国店で調理を行っていましたが、札幌エスタの閉館予定を受けて、真駒内本店に移ってきました。現在は副店長を務めさせていただいています」
人懐っこく、かつ、どこか意思の強さを感じさせる笑顔が印象的です。
週6日のアルバイトで基礎を身につけ
老舗ホテルの四川料理店の厨房で学ぶ
真駒内店の運営にも関わる斉藤さんですが、そのルーツは、実は中国料理にあります。調理の専門学校を卒業後、札幌市内にある老舗ホテルの四川料理店で厨房を担い、実践のなかから本場の技術を身につけてきました。
「専門学校で、中国料理専攻の講師の先生に憧れ、教えを乞ううちに、その道に進みたいと思うようになりました」
そう話す斉藤さんですが、専門学校の2年間には人並み外れた努力で、調理について経験のなかから学んでいます。家庭の事情もあったそうですが、自宅近くの温浴施設で週3日、講師の先生が運営する中国料理店で週3日、授業が終わってから深夜までアルバイトで厨房に入る生活を続けているのです。
「中国料理店では営業時間後、自分で賄いをつくることになっていました。食材も調理器具も自由に使うことができ、かつ、上司が教えてくれるんです。そこで店のメニューはほぼ、すべてつくれるようになりました」
ホテルの四川料理店にいたのは1年間ほどでしたが、調理の基礎をしっかりとつかむことができたと斉藤さんは振り返ります。
提供までのスピードもラーメン店の命
急ぐけれど焦らない姿勢を身につける
「今だから正直に言うと、待遇面を良くしたいというのが白樺山荘に転職を決めた理由の一つでした。同時に、中国料理ではないものの調理に共通する部分があり、しかも自分にとっては未知のラーメンの世界で新たに学びたいと思ったんです」
ラーメンの調理に関しては、手順を覚えた後は特段、大変さは感じたことがないと話す斉藤さん。これはさすが、これまでの経験の賜物と言えそうですが、当初は、焦りが強かったといいます。オーダーを受けてから提供するまでのスピードもある意味、ラーメンの命であり、そう考えると、昼どきなどオーダーが溜まってくると、気持ち的に一杯いっぱいになっていました。
「ただ、焦ったところで調理時間はせいぜい30秒〜1分程度違うかどうか。それなら冷静になり、正確な味を出すことに専念した方がいいと、慣れてくると思うようになりました。焦るのと急ぐのとは違う、ということがわかってきたんですね」
斉藤さんの〝平常心〟には、そんな気持ちの動きがあったのです。
緊張し慣れるまで時間がかかった接客
一人ひとりに合わせた応対を心がける
小学生の頃から、母親の手伝いをするなかで料理が好きになっていったという斉藤さん。祖父と叔父さんが大工さん。その姿を見て育ち、ものづくりに興味を持っていたなかで目が向いたのが料理でした。
「自分で言うのもなんですが、家系なのか手先は器用な方ですし、何かを始めると手が抜けないのも祖父と同じで。友人や家族とのイベントでは、必ず中華のフルコースをつくりますが、それが自分には当たり前なんです」
そんな斉藤さんにも弱点がありました。それは接客。ホテルの中国料理店では、ホールに出ることは、ほとんどなかったからです。
「最初はすごく緊張しました(笑)。まともに接客をしたことは一度もなく、声をかけるだけでドキドキ。慣れるまでは少し時間がかかりましたが、ホテルで教えられたマナー、立ち居振る舞いの仕方などが、今考えるととても役立ちましたね」
誰もが気軽に訪れるラーメン店。フレンドリーで親しみやすい接客と、たとえば高齢のお客さんには〝足元に段差がありますのでご注意ください〟とひと声かけるなど、お客さん一人ひとりに合わせた応対を心がけているという斉藤さんです。
調理・接客の両方を担え環境に楽しさ
季節限定麺などメニュー考案にも参画
「最初は苦手意識もあった接客ですが、厨房と接客、両方を担うという環境があるからこそ今、楽しく仕事ができていると感じます」
調理に関しては自然に身体が動くという斉藤さん。繁忙店にサポートで入った時は、イレギュラーな仕事の疲れから眠気を感じるなか、オーダーもないのに気づくとラーメンをつくっていたという武勇伝(?)もあるそうです。
「眠気を感じる時は、厨房を他のスタッフに任せてホールに出ます。声を出してお客さまをお迎えし、動き回っていると次の調理に向かうためのリフレッシュにもなるんです」
白樺山荘では夏・冬に限定麺を発売していますが、斉藤さんは、そうした商品企画にも参画しています。前職の経験を活かしながら冷たい坦々麺を考案したり、羊ヶ丘店では羊の唐揚げを乗せた一品も生み出しているそうです。
「もともと小籠包に興味があり、餃子や焼売、豚まんなどの開発にも経験を活かせています。ラーメン店のなかでも、白樺山荘にだからこそできること。巡り合いに感謝しています」
自分の成長のためにも、店長を目指したいという斉藤さん。一方で、現場の仕事を続けていければ大満足とも。理想の働き方を見た気がしました。
シゴトのフカボリ
ラーメン店料理人の一日
9:00
出勤、食材などの仕込み作業
10:30
券売機の準備、アルバイトのシフト確認、ひと休み
11:00
開店、調理・接客業務
21:00
閉店、帰宅
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
包丁
専門学校時代から使っている包丁です。高価なものではありませんが、手に馴染み、使い勝手が良いので店の調理でも大活躍しています。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

愛情を込めてつくると、料理はおいしくなると言われますが、それは本当だと思っています。中国料理の経験を生かしながら向き合う一杯のラーメン。毎日、愛を込めてつくっています。ぜひ、食べに来てください!

株式会社白樺山荘

札幌味噌ラーメンでは定番の素材ながら、そのバランスを吟味して作り上げる〝濃厚なのにくどくない〟スープで不動の人気を誇るラーメン店。札幌を中心に道内6店舗、道外にも1店舗を展開。

住所
北海道札幌市南区真駒内柏丘3-1-40(真駒内本店)
TEL
011-522-6276
URL
http://www.shirakaba-sansou.jp

お仕事データ

おいしさと快適な時間を提供。
飲食店スタッフ
飲食店スタッフとは
接客や調理によって、
お客様に「おいしい時間」を。

飲食店の仕事は、多くの場合「ホール」と「調理」に分けられています。ホールスタッフは主に接客サービスを担当。客席への案内や注文のお伺い、配膳、会計などを行います。調理スタッフは料理の下ごしらえや味付け、調理、盛り付けに加え、キッチンの清掃や調理用具の手入れなども担うことが多いでしょう。さらに、飲食店店長がホール・キッチンスタッフのマネジメントや教育を手がけ、売上の管理や食材の発注、営業計画といった幅広い業務も守備範囲に据えながら店舗全体を運営しています。店舗の規模によっては各ポジションを兼務することもあるでしょう。これら飲食店スタッフはお互いに連携しながら、お客様に「おいしさ」と「快適な時間」を提供しています。

飲食店スタッフに向いてる人って?
明るく清潔感があり、
チームワークを大切に働ける人。

飲食店スタッフに共通して必要なのは食に対する興味はもちろん、おいしい料理とともに快適なひとときを提供したいという気持ちです。また、接客や調理をともなう仕事である以上、明るく清潔感のある人が求められます。ランチタイムやディナータイムといった忙しい時でも、お客様にスピーディーに料理を提供しなければなりません。そのため、チームワークを大切に、効率良く作業を進める力も必要です。

飲食店スタッフになるためには

飲食店スタッフになるために必要な資格はありません。高校や専門学校、短大、大学を卒業後、希望する飲食企業に入社するのが一般的です。その他、調理専門学校で調理の基礎や調理師の資格を身に付けたり、栄養士養成施設として指定認可された学校で栄養士の資格を取ったり、食に関連する学校に進んだ後に就職するコースを選ぶ人も少なくありません。ホールスタッフや調理スタッフとして経験を積んだ後、飲食店店長を目指すことも可能です。

ワンポイントアドバイス
スタッフのマネジメントが
とりわけ大切な仕事。

飲食店店長を筆頭に、ホールや調理のリーダー職を務める飲食店スタッフにとって、人材のマネジメントは売上に関わる重要な業務。部下やアルバイトをまとめ、一人ひとりが生き生きと働けるよう管理・教育することでやる気と能力が引き出されます。具体的には人員が不足しないように配慮しながら休み希望を取り入れたシフトを作成したり、元気のない人に声がけしてモチベーションを高めたり、仕事への意欲を促すことでお客様への貢献につなげることが大切です。

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