小嶋 友貴さん
インタビュー公開日:2024.06.21

野球練習の防球ネットなどを製作。
やってみたいという熱意で採用に。
会社名だけでは、事業内容がわかりにくい企業は少なくありません。「スポーツだいとう」も、そんな会社といえそうです。まちのスポーツ用品店のような名前ですが、事業の中心は体育器具の設計・製作・施工。
「野球の練習時、球がグラウンドの外に出ないようにしたり、打撃練習のピッチャーを球から守る防球(ぼうきゅう)ネットやバッティングゲージなどの製作に、多くのノウハウと実績があります。高い耐久性が自慢です」
そう話すのは、製作を担当している小嶋友貴さん。入社12年のベテランです。同社では、公園などにある遊器具の製作、グラウンドやテニスコートの整備なども行っています。
「初めて聞く仕事で、新鮮に感じたこと、そしてそこが”おもしろそうだな” と思ったことが入社のきっかけでした」
高校を中退し、ハローワークでこの会社を見つけたそうですが、製造職ということで本来は、溶接や重機の操作などの資格が必要だったそうです。どれも持っていなかっ小嶋さんですが、相談員から「やってみたいという熱意があるならそれをアピールしてみたら」というアドバイスを受け、みごと採用。「私服で面接に行ってしまった」という型破りなところも、目に止まったのかもしれないと振り返ります。
知識も経験もないところからスタート。
「小嶋くん器用だね」のひとことが励みに。
たとえば防球ネットなら、材料となる鋼材を必要な長さにカットし、曲げ加工を施して溶接。そして塗装を行って仕上げ、ネットを設置し、完成させるまでの一連の作業が、すべて小嶋さんの仕事です。それは、まさにハンドメイドの世界。
「完成した製品は、施工部門がトラックに載せて学校などに運び、搬入・設置してきますが、私たち製造の担当者が現地に赴くケースもあります。まさに一から十までに関わることができ、充実感がありますね」
笑顔で話す小嶋さんですが、入社時には知識も経験値もまったくなし。ベテラン揃いの先輩の補助作業から始まり、少しずつ溶接や、重機の操縦などに触れながら、幅広い作業技術を一つひとつ、時間をかけて身につけてきました。
「当社の製品づくりの流れをある程度覚え、製作を担えるようになってきたのは、入社から5、6年経ってから。常に作業のことを考え、メモをとり、自分なりに考える日々でした」
なかなか作業がうまくできず、自分は不器用だと悩んでいた時「それは思い込み。これができるんだから、器用だよ」と先輩に言われた言葉が、とても励みになり、自信につながったと振り返ります。
子どもたちや野球の選手たちと、
触れ合う機会あることもやりがい。
ものづくりに強い興味があったわけではなく、「覚えたい」という一心で仕事に取り組んできただけと話す小嶋さん。一方で、子どもが好きで、”遊びやスポーツを通じて、青少年の体力向上や健全育成に貢献します”という企業理念に共感したことも原動力だったそうです。
「遊具を納めに保育園・幼稚園にうかがって、子どもたちから「ありがとう」という言葉をもらえる時、いつもやりがいを感じますし、もっといい仕事をしたいと思えたことも、この仕事を続けてこられた理由ですね」
同社が得意とする防球ネットなど野球関連の製品では、高校野球の道内強豪校にも多くの納入実績があります。四方をネットで囲む、鳥籠と呼ばれるバッティングゲージなど、ほとんどの器具がスポーツだいとうの製品という学校もあるそうです。時には監督や選手たちと言葉を交わす機会もあるのだとか。
「当社ではメンテナンスも行っていて、補修のために学校にうかがうこともありますし、冬には張ってあるネットを下げ、春に張りに行くなど、年間を通してやりとりがあるんです」
実際に製品が使われているようすに触れらることも、楽しみの一つだのだと話します。
社会人野球の室内練習場の器具から、
漁業関連の製品まで対応できる技術力。
学校だけでなく、社会人野球でも同社の製品が愛用されています。社会人野球の主要大会・都市対抗野球にも名を連ねる北海道ガス硬式野球部。2018年に完成した室内練習場の仕事を、小嶋さんは担当しました。
「建物ができる前から現地調査に赴き、ネットの張り方といった詳細まで打ち合わせ、器具の製作を行っていきました。限られた施工期間のなか、求められる性能・品質を確保するため苦心した部分もありますが、新設の施設に関われたのは、有意義な経験でしたね」
あらゆる要望に、ゼロから対応できるのは、同社には設計から製作まで、一貫して対応できる体制があるからなのだと、少し誇らしげに教えてくれました。
「野球などスポーツ関連の器具以外に、小樽という土地柄ならではの仕事もあります。たとえば稚魚を入れる生け簀(す)、昆布を干す棚など、漁業関係の製品もその一つ。日頃からオーダーメイドの製品をつくる中で蓄積した技術力があるからこそできる仕事です」その意味では「まちの鉄工所」に近いイメージもあると小嶋さん。同時に、野球関連の分野では、まさに、道内全域にその名を知られる企業となっています。
後輩に手本になれる仕事を心がけ、
職場の雰囲気づくりにも取り組みたい。
12年前に入社した当時、ベテランが少数精鋭で製作を行っている現場では、教えてもらうというよりは、見て覚える部分も大きかったと振り返る小嶋さん。だからこそ、本物の力を身につけることができたのも確かですが、後輩には自分なりに教えていきたいと話します。
「自分で覚えることが基本ですが、教えられて育つ部分もあると思うんですね。そのためには、手本になれるような仕事をしなければなりませんし、常に全力で取り組まなければ、と思っています」
まずは自分の仕事を見せる。そして、次に体感させることで発見を得てもらい、どうすればうまくいくのか考えさせる。そうした教え方で、後輩を導いていきたいのだそう。
「工場の現場には、黙々と仕事と向き合う、いわゆる職人気質の雰囲気もありますが、私はそのなかで、いつも笑顔でいることを心がけています。そうすれば場の空気も和み、若い世代が入っても成長しやすいと思うんですね」
そして、この人に教えられてよかったと、いわれる人になりたい。そう言い残すと、溶接作業に取りかかります。叩き上げで技術を磨いてきたプライドが、前向きなオーラとなって、その背中に漂っているようです。
シゴトのフカボリ
体育器具・遊具製造の一日
8:00
出社、前日の作業進捗報告、今日の作業指示
8:10
製作作業開始
10:00
休憩
10:15
製作作業
12:00
昼食・休憩
13:00
製作作業
15:00
休憩
15:15
製作作業
17:00
終業、帰宅
シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具
溶接面
溶接にともなって発生する有害光線から目を守る保護具。溶接作業を行う際に必須となるアイテムで、手になじんだものを使用しています。この面でないと、仕事の進捗にも影響します。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

私たちの仕事は、ある意味、職人の世界ですが、技術が高いことと同時に、職場の雰囲気も、いい仕事をするためには大切だと考えています。率先して、笑顔を大切にすることで、働きやすさもさらにアップさせたいですね。

株式会社スポーツだいとう

1958年の設立以来、体育器具の製作・施工、公園遊具の製作・施工およびメンテナンスを手がけています。野球防球ネットのシェアは道内トップクラス。

住所
北海道小樽市奥沢3丁目29-13
TEL
0134-34-0200
URL
https://sp-daito.co.jp

お仕事データ

工場内で製品を生産。
製造工
製造工とは
製品の加工や組み立て、
メンテナンスなどものづくりに携わる仕事。

製造工は家電やパソコン、電子機器といった機械製品から、住宅用資材、紙、プラスチック用品、さらには施設の一部に使われる大型製品まで、多種多彩なものづくりに携わる仕事です。主に工場のライン作業によって各パーツを加工したり、部品を組み立てたり、さまざまな工程を経て一つの製品を完成させます。一方で、繊細な手作業によってものづくりを行う職場も少なくありません。「つくる」だけではなく、製品の最終検査や梱包・出荷、納品後のメンテナンスや修繕を担うこともあります。いずれの作業もものづくりの世界には欠かすことができませんが、未経験者にも門戸を開く企業が多いことからチャレンジしやすい仕事です。

製造工に向いてる人って?
「ものづくりが好き」で、
根気強さと注意深さを持っている人。

製造工には「ものづくりが好き」という気持ちが欠かせません。作業自体は決められたマニュアルやルールに沿うケースが多いことから、同じ作業をコツコツと続けられる根気強さも必要です。また、機械で加工した部品に不良がないかチェックしたり、製品の最終検査をしたりすることもあるため、注意深いタイプの人も向いているでしょう。

製造工なるためには

製造工になるために必要な資格はありません。多くの場合、工業系の高校や専門学校、短大・大学を卒業後、製造工場を持つ会社に就職するのが一般的です。知識やスキルは入社後の教育・研修によって身につけられるため、未経験からでも挑戦しやすい仕事といえるでしょう。職場や手がける製品によっては、後々「フォークリフト」や「玉掛け」などの資格取得をすすめられることがあります。

ワンポイントアドバイス
マルチスキルを持った製造工が
今後のカギを握る存在に!?

これまでの製造工は、一人が一つの持ち場だけを担当するケースが一般的でした。けれど、ここ最近は複数台の機械を操作できたり、多くの作業や工程を担える技術を身につけたり、マルチスキルを習得させる企業が増えているようです。そうすることで皆で仕事を分散して業務量を平準化できる他、チームワークや組織の柔軟性が高まるといわれています。今後はマルチスキルを持った製造工が会社のカギを握りそうです。