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造船技術者_芹川  琉唯さん
インタビュー公開日:2026.07.01

貨物船の新造などを手がける現場で、
数少ない女性の技術者として奮闘中。
身体になじんだ、仕事汚れも誇らしげな作業着と安全靴。ヘッドライト付きのヘルメットは、年季さえ感じさせます。明るい色の髪の間から、キラリと光るのはイヤリング、指先にはネイル。現場姿と、柔らかな笑顔のギャップが印象的な芹川琉唯(せりかわ るい)さんです。
「高校を卒業して入社し、丸2年が過ぎました。最初は夏の暑さ、冬の寒さが大変でしたし、少し重いものを持つ作業もあり、体力的な不安もありました。ただ、『おもしろそう!』と興味を抱いた仕事なので、前向きな気持ちで取り組むうちに、知識も技術も身に付いていきました」
芹川さんが働くのは、船倉(船内の貨物スペース)に穀物などを、直接入れて運ぶ「ばら積み貨物船」やフェリーの新造・修繕を手掛ける『函館どつく』。明治時代から続く技術力の高さで知られる造船会社です。従業員は1,000人以上。芹川さんもその一人として新しい船をつくる新造船の現場で働いています。
「高校で『船をつくる会社』と聞き、ちょっと気になって、会社見学に2回参加したのが入社のきっかけになりました」
芹川さんは、同社の製造現場で勤務する女性の、実質的な第一号なのだとか。女性の技術者採用を本格化させた、そのタイミングで高校卒業を迎えたことも、縁となりました。
見上げるような船の構造体の中に、
各種の配管を敷設する迫力の作業。
芹川さんが所属するのは、艤装(ぎそう)課という部署。艤装とは船体以外の部分で、エンジンをはじめとする各種装備、荷役や乗組員が使う設備などをいいます。芹川さんは、設備を機能させるためのインフラといえる「配管」の敷設を主に担っています。
「水を通すもの、空調設備に使うものなど、様々な配管があるなかで私が担当しているのは、船のエンジン関連以外の、ほぼすべての配管。新造船をつくる初期工程から、居住区と呼ばれる乗組員のスペースをつくる最終段階まで、長いスパンで関わっていきます」
一枚の分厚い鉄板から、設計図に沿って様々な部品を切り出します。その部品に曲げ加工などを施して小さな構造体(船の部材)をつくり、それらを組み合わせて100t以上になる巨大なブロック状の構造体にしていきます。そして、それをつなぎ合わせることで船体ができあがります。簡単に説明すると、これが新造船をつくるプロセス。芹川さんの仕事が本格的に始まるのは、その大きな構造体が組み上がる頃です。
「船体の形になると通せなくなる配管があるので、この段階で構造体の中に組み込み、溶接やボルトを使って接続していきます」
見上げるような大きさの構造体の間を素早く動き、足場に登ったりその中に入って配管を敷設する様子は迫力満点。ベテランに混じり、すでに存在感を放っている芹川さんです。
男性中心の世界に飛び込む不安を、
払拭させてくれた期待と歓迎の熱量。
「高校卒業後は就職すると早い段階で決めていました。興味があった仕事は…鳶職! 建設関係で働く先輩や友人がいて、工具などを携帯する腰道具を付け、ひょいっと足場を上り下りする姿を見て、『かっこいい』と思っていたんです。とはいえ、男性が大半を占める世界でもあり、難しいそうと諦めた時、私の希望を知っていた高校の先生が教えてくれたのが、この会社でした」
現場で働く、ということにも憧れていたという芹川さん。がぜん、興味が湧いたものの、前述のように女性がほとんどいなかった世界。男性の間に入っていくことも、少し勇気が必要だったと振り返ります。
「それでも、更衣室などの環境も一から整えていただき、何よりも女性の活躍に期待を寄せる熱量のようなものと、歓迎していただける空気が感じられ、不安を払拭することができました。入社後は、主だった部署を回って実習をさせていただきましたが、『せひ、うちの部署に!』という声もかけていただき、歓迎されているんだと、うれしくなりました」
まるで、選手を指名するドラフト会議のような雰囲気だったと、振り返って笑う芹川さん。溶接の仕事にも興味を抱きましたが、大きな構造体の中に、何本も、何本も配管が通る現場を目の当たりにし、スケールの大きさに惹かれて、艤装をやってみたいと感じたのだそうです。
経験を積ませてもらうなかで急成長。
作業の遅れにハッパをかけることも。
とはいえ、船に関する知識はゼロ。配属当初は先輩の補助作業をしながら仕事の手順などを覚える日々。それでも半年ほどで仕事にも環境にも慣れ、1年が経つ頃にはできることも増え、自信も芽生えてきたと、急成長を遂げてきた芹川さん。
「手本を見せながら具体的に説明していただき、さらに『失敗してもいいから、まずはやってみて』と、早い段階から経験を積ませていただけました。その繰り返しを経て、着実に技術が身に付いていきましたね」
やがて1人で任されることが増え、先輩の確認は受けるものの、2年目にして一定の業務は任されるようになっていった芹川さん。
「その日にこなすべき作業、ここまで終わらせようという目標を達成できた時は、『やってやったぞ!』みたいな感じでうれしいですね。スケジュールに余裕がない時は、ちょっとピリピリした雰囲気になることもありますが、みんな目指すところは一緒なので、その緊張感もむしろモチベーションにつながりますね」
大きな配管を敷設する作業などは、一人ではできないといい、チームとしての連携が必要になるのだそうです。その一員として、芹川さんは、チームの作業ペースから後工程が遅れそうな時には、逆に先輩にハッパをかけることもあるのだとか。その真剣さと責任感が、周囲の信頼へとつながっています。
船酔い体質ながら、航行テストに乗船。
周囲から聞かれる側になるのが目標。
船体が組み上がると、キャビンと呼ばれる居住区がその上に載ります。新造依頼が多い船は、全長180m、幅35mほどの巨大なもの。船長を含めて5名ほどのクルーが乗船します。
「クルーの個室のお風呂、トイレ、洗面台などの配管も私の仕事です。作業はそうした設備機器の取り付けが終わった後で行うことから、どうしてもスケジュールがタイトになりがち。そこが少し、大変な部分と言えますね」
船が完成すると、発注者に引き渡す1カ月ほど前に、海上を走らせる「航行テスト」が行われます。1泊2日ほどのこの航海には芹川さんも乗船するのだそうです。
「蛇口からお湯が出るか、トイレが正常に流れるかなどを確認したり、設備のテストなどを行います。船に乗れてうらやましいと思われるかもしれませんが、私は船酔いするタイプで…。多くの時間、部屋でのんびりさせてもらっています(笑)」
クルーにも女性は少なく、まだ男性の世界。一方で、「女性だから、男性だから」という意識を、あえて強く持たないことも大切なのではないかと芹川さんは話します。「仕事に集中していれば、お互いにそう気にならないものです」。今は先輩などに聞くことも多いけれど、逆に聞かれる側になれるよう、知識・技術を高めていきたいと、やさしい表情の中に情熱を秘めています。
シゴトのフカボリ
造船技術者の一日
8:00
出勤、ラジオ体操、朝会
8:05
配管作業開始
10:00
休憩
10:15
配管作業
12:00
昼休憩
13:00
配管作業
15:00
休憩
15:15
配管作業
17:00
作業終了、退勤

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具

配管作業道具
銅管を切断するカッター、ボルトを締めるスパナなど、配管作業に関する道具一式を常に携帯しています。配管の種類によって、使用する道具や手順が異なり、必要な技術も変わってきます。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

興味を抱く反面、体力的な面で不安がありましたが、今は自分の『好き』を大切にして、チャレンジして良かったと思っています。これからも、挑戦する気持ちをもって、技術を磨いていきたいと思っています!

函館どつく株式会社

1896(明治29)年に創立された函館船渠(はこだてせんきょ)を前身とする重機械メーカー。貨物船、フェリーなどの新造、艦艇・船舶の修繕などを主に行っています。

住所
北海道函館市弁天町20番3号
TEL
0138-22-3111
URL
https://www.hakodate-dock.co.jp

お仕事データ

工場内で製品を生産。
製造工
製造工とは
製品の加工や組み立て、
メンテナンスなどものづくりに携わる仕事。

製造工は家電やパソコン、電子機器といった機械製品から、住宅用資材、紙、プラスチック用品、さらには施設の一部に使われる大型製品まで、多種多彩なものづくりに携わる仕事です。主に工場のライン作業によって各パーツを加工したり、部品を組み立てたり、さまざまな工程を経て一つの製品を完成させます。一方で、繊細な手作業によってものづくりを行う職場も少なくありません。「つくる」だけではなく、製品の最終検査や梱包・出荷、納品後のメンテナンスや修繕を担うこともあります。いずれの作業もものづくりの世界には欠かすことができませんが、未経験者にも門戸を開く企業が多いことからチャレンジしやすい仕事です。

製造工に向いてる人って?
「ものづくりが好き」で、
根気強さと注意深さを持っている人。

製造工には「ものづくりが好き」という気持ちが欠かせません。作業自体は決められたマニュアルやルールに沿うケースが多いことから、同じ作業をコツコツと続けられる根気強さも必要です。また、機械で加工した部品に不良がないかチェックしたり、製品の最終検査をしたりすることもあるため、注意深いタイプの人も向いているでしょう。

製造工なるためには

製造工になるために必要な資格はありません。多くの場合、工業系の高校や専門学校、短大・大学を卒業後、製造工場を持つ会社に就職するのが一般的です。知識やスキルは入社後の教育・研修によって身につけられるため、未経験からでも挑戦しやすい仕事といえるでしょう。職場や手がける製品によっては、後々「フォークリフト」や「玉掛け」などの資格取得をすすめられることがあります。

ワンポイントアドバイス
マルチスキルを持った製造工が
今後のカギを握る存在に!?

これまでの製造工は、一人が一つの持ち場だけを担当するケースが一般的でした。けれど、ここ最近は複数台の機械を操作できたり、多くの作業や工程を担える技術を身につけたり、マルチスキルを習得させる企業が増えているようです。そうすることで皆で仕事を分散して業務量を平準化できる他、チームワークや組織の柔軟性が高まるといわれています。今後はマルチスキルを持った製造工が会社のカギを握りそうです。