法人営業_楠本 颯太さん
インタビュー公開日:2025.09.11

企業の省エネを支援して、
カーボンニュートラルを進めていく。
『温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、全体として排出量をゼロにすることを目指す概念です』。これは、『カーボンニュートラルとはどういう意味?』とAIに尋ねた答え。二酸化炭素の排出量をゼロ、または大幅に削減する脱炭素とは少しニュアンスが異なるそうですが、いずれも近年、企業や自治体が積極的に取り組むもののひとつになっています。
「その第一歩として、省エネルギーがあります。様々なモノの値段が上がるなか、自社で使うエネルギーコストをいかに下げるか。対策を考え、実施することが結果としてカーボンニュートラルにつながっていくんです」
そう教えてくれたのは、北海道電力の入社6年目、楠本颯太さん。「バリューマーケティング部 エネルギーソリューション室 省エネサポートグループ」というのが所属部署の名称で、主な仕事は企業の省エネ支援です。
「工場などで電力の消費量を減らすための提案を行うと、『電力会社なのに使用電力量を減らすサポートをするんですか?』と不思議がられますが、お客さまに付加価値をご提供することで、その事業を後押しすることが役割なんです」
多くの燃料を輸入に頼るなか、企業の省エネによって使用量そのものを減らすことは日本の利益にもなるのだと、キラキラした目で話します。
工場などのエネルギー消費を診断。
省エネの相談に応じて道内を走り回る。
省エネルギーに取り組みたいという企業からの相談を受けて現地に赴き、省エネ診断を行うというのが、楠本さんの主要業務。オフィスや店舗、工場などの現場に赴き、機器の消費電力や使用電力量を調べて省エネ、コスト削減のアドバイスを有償で行います。
「エネルギーコンサルティング(※)という分野の仕事です。蛍光灯をLEDに交換するというシンプルなことから、効率の高い設備機器への入れ替えまで、診断に基づいて幅広い提案を行います。電力を使う機器だけでなく灯油、ガスのボイラーなどエネルギー全般について診ていくんです」
北海道電力は道内各地に支社がありますが、楠本さんが担当する業務はすべて本社で直接対応。そのため、各支社が企業から省エネ対策の相談を受けると、出張して現地へと出かけます。全道を走り回る日々です。
「移動が続くと大変さを感じることもありますが、知らない地域に出向き、その土地ならではの工場を訪れて工場長などの説明を受けながらラインを見たりできるのは、『工場見学』的な面白さを感じますね。『こんな現場があるんだ!』と発見もあり、勉強にもなります」
食品工場では、現場を診断後、「おみやげ」にと商品をいただくこともあるのだと、少しうれしそうに笑います。
※工場や商業施設などのエネルギー利用の最適化、コスト削減、環境負荷低減などを提案する業務。
苦手分野もやってみれば成長につながる。
世界一嫌いな物理を、資格の勉強で克服。
省エネ診断とそのデータに基づくコスト削減の提案と聞くと、理系分野のイメージですが、楠本さんは文学部の出身。人の生活や産業活動に不可欠な「インフラ」に関わる仕事に興味を抱いたことが、北海道電力への入社を決める理由だったと振り返ります。
「基本的な省エネ診断は、問題なくできるようになっていますが、理系の知識が必要な部分については覚えるのに苦労しましたし、今も勉強中。ただ、技術者も多く所属する部署なので、現場で教えてもらうとともに、資格取得を通して知識を身に付けました」
エネルギーコンサルティングの分野で役立つ資格のひとつとして、楠本さんは入社後、エネルギー管理士を取得しています。これは、エネルギーを使用する設備の維持管理や効率化を担う国家資格です。
「物理の知識が必須となる資格です。でも、物理は私が世界で一番嫌いな分野で、高校の頃は赤点だらけ(笑)。人生で初めて、熱力学といったものに触れ、理論や計算に難しさを感じる一方で、知的好奇心が刺激されたことは、自分のなかで発見でした」
嫌いだったり、苦手に感じることでも、仕事を通してやってみれば意外とできるもの。逃げずに向かっていけば成長につながることを、仕事を通して実感できたと話します。
行政のカーボンニュートラル事業にも参加。
提案を前向きに捉えてくれるとうれしい。
中小企業の省エネやカーボンニュートラルへの取り組みを行政が推進する動きも活発になっています。北海道の「カーボンニュートラルファーストステップ事業」もそのひとつ。道内の企業に対して省エネ診断を行い、カーボンニュートラルに向けたプランの作成を公費で支援するという事業です。
「当社では、2025年度の同事業を省エネ診断機関として北海道から受託し、参加企業の募集から省エネ診断、報告書の作成までを請け負っています」
今年度は製造業が対象で、圧縮空気を送るコンプレッサー、冷凍冷蔵庫(冷凍機)、電気の電圧を調整する変圧器といった設備の診断を実施。老朽化で効率の下がった設備の更新を促す、そんな支援を行っているといいます。
「省エネ診断にあたって、その企業が何を、どんな方法で、どのくらい製造しているかなどを把握し、しっかり理解することを意識しています。省エネ対策として一般的にベターだと思われる方法も、その工場の特性上、そのままでは難しいケースもあるからです」
お客さまの立場になって考え、提案することを大切にしているのだと楠本さん。
「そうしたなかで、『これなら、取り組んでみようかな』と前向きになってもらえると、うれしいですね」
セミナーの開催やパンフレット作成も担当。
業務改善まで提案できるようになりたい!
同じく北海道からの委託業務として、カーボンニュートラル推進のためのセミナー開催やパンフレット作成も手がけている北海道電力。楠本さんはその業務も担当しています。
「省エネ診断とはまったく異なる業務のため、新たに学びながら取り組んでおり、広告代理店とコンソーシアム(共同企業体)を組んで事業を進めています。例えば、省エネのノウハウや技術資料などのコンテンツを当社でまとめ、広告代理店がパンフレットのデザイン制作を行うといった仕事の流れです」
これまで、あまり接することのなかった分野の人たちと出会えることが新鮮、と話す楠本さん。カーボンニュートラルを、より身近に感じてもらうための構成や内容づくりにチームとして頭をひねっている最中です。
「オンラインで行うセミナーでは、講師の選定も担当しており、身近な省エネから始める『カーボンニュートラルの実現』に、どうすれば関心を持ってもらえるかを考えつつ業務を行っています」
社会的意義としてのカーボンニュートラルの推進と、企業にとっての利益の両立。その両方を実現することが大切だと語る楠本さんは、次の目標をこう描きます。
「企業コンサルティング的な視点で、省エネにとどまらず業務改善まで提案できるようになりたい」
次代への大切な架け橋を担う仕事に、楠本さんは今日も意欲を燃やしています。
シゴトのフカボリ
法人営業の一日
8:40
出勤。省エネ診断の準備。出発。
9:00
省エネ診断を実施。
12:00
昼休憩
14:00
帰社。診断内容のまとめ。対応履歴入力。
15:00
翌日の出張準備(資料用意、計測器の設定等)
17:20
退勤

シゴトのフカボリ
拝見!オシゴトの道具

電流計(左)とロガー(右)
省エネ診断の基本となる、電流測定を行う機器です。工場設備などの電気回路を流れる電流の大きさを測定し、ロガーに表示します。負荷設備の動作状態、安定性などを知ることができます。
シゴトのフカボリ
みなさんへ伝えたいこと

暮らしや産業を支えるインフラに関わる仕事に惹かれて入社したものの、文系出身の私には、未知のことばかり。難しさも感じましたが、仕事として取り組むと「意外とできる!」。何事もチャレンジが良い事につながると思います。

北海道電力株式会社

電力管理を民営化する電気事業再編成令に基づき1951年に設立。北海道の電力会社として「ほくでん」の愛称で親しまれ、暮らしと産業を支えています。

住所
北海道札幌市中央区大通東1丁目2番地
TEL
011-251-1111
URL
https://www.hepco.co.jp

お仕事データ

商品やサービスを販売!
営業
営業とは
商品やサービスを販売し、
売上に結びつける大黒柱。

一般に自社の商品やサービスを販売するのが営業の主な仕事。企業向けに販売する法人営業と、個人にセールスする個人営業とに大きく分けられます。とはいえ、商材によってスタイルはさまざま。見込み客を訪問し売り込む新規開拓営業、固定客を中心に訪問し取引するルートセールスなどがあり、扱う金額はもちろん、顧客とのコミュニケーション方法も異なります。また、販売戦略を立てたり、課題を分析したり、時にはお客様先に同行する営業企画を担うことも。営業に共通していえるのは商品やサービスを売上に結びつける、企業にとっての大黒柱!

営業に向いてる人って?
人と接することが好きな聞き上手。

営業というと明るく元気で話し上手な人をイメージしがち。けれど、押しが強く、口が達者なだけでは売上にはなかなか結びつきません。相手を尊重し、じっくりと耳を傾けてニーズを引き出すのが得意なタイプが、トップセールスを叩き出すケースも多いようです。「人と接することが好き」で会話のキャッチボールができることが大切です。

営業になるためには

基本的には特別な資格や学歴は必要ありません。ただし、海外との取引をする上で英語力を持っていた方が有利だったり、不動産会社では「宅地建物取引士」の資格が必要だったり、就職先や業界によって専門性が求められることもあります。営業企画の場合は、市場調査や分析などの知識があると活躍の幅が広がります。

ワンポイントアドバイス
タフな反面、結果への見返りも大!

営業職の特徴としては成果や実績をあげた人に、より多くの給料が与えられる「成果給」を取り入れている企業が多いこと。その場合、ビジネスの最前線で奮闘するタフな仕事の反面、結果を残せば見返りとして大きなインセンティブを手にすることができます。

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